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カンブリア宮殿・・・古材倉庫グループ / 井上幸一代表

 今回のゲストは【古材倉庫グループ・井上幸一代表】です。

 古材倉庫グループって読んで字の如くで、古材を商う集団です。

 木は生き物だと言うのはみんなが知っている事実です。生き物であれば切った直後が

最も強く年月とともに劣化していくと思うのが常だと思います。ところが木は違うんです。

木の強度は伐採されてから100年後がピークでそこから600年かけて劣化して行く。木は

大切な財産なのです。

 現在築60年以上の家が10年間で45万戸解体されているそうです。先日水戸線に乗って

旅しましたけれども古い建物の屋根が地震で随分と壊れていました。ああいうのも契機

になるのでしょう。住み心地からしても壊すのは責められないです。さて、そこにはもち

ろん古材があります。それを活かしませんかと言うご提案です。

 古材リサイクルと言うと最近は居酒屋さんなんかで古材を使ったお洒落な店内と言う

お店によく出くわします。私は古材は個人的には好きですね。落ち着きます。黄色の灯り

と古材のお店で美味しい肴をいただきつつ杯を傾けるのって素敵だと思います。

 もうちょっとだけ古材倉庫グループの説明をしておきましょう。8名の小さな会社ですが

グループ全体の売上は29億円。解体業者と材木店、工務店が連携してビジネスをして

おられます。お仕事の流れはまずは古材の買い取りです。古い建物を壊したいと言う

ニーズを聞いて解体に出かけます。解体もご近所で見る様な重機でバリバリなんて言う

訳には行きません。材木を取りださなきゃなりませんから。ご参考までに番組で紹介さ

れた建物解体価格は153万円で古材買取価格は19万円。差引134万円払う訳です。

バリバリ解体と比べるとちょっと高いかも知れません。ただ物凄く丁寧に解体されて行

きますから番組で流れたバリバリ解体を見て涙するお婆ちゃんの姿と、丁寧に解体され

る建物を眺め、取り出された古材をさすりながら感慨深そうな中年のおじさんの姿は対

照的でした。

 古材はそのままでは使えませんので提携の材木店に運ばれます。そこで強度を測っ

たり(ヤング係数)虫食いの確認などをして使える部分とそうでない部分を切り分け、デ

ータを入力して材木店で保管されます。

 それとは一線を画して、古材を扱う工務店が必要です。古材に興味のある方からの

相談を受け希望に合う古材を入力されたデータから探し、木をお客さんと見に行って

好みの材木を決めて設計して行くと言う流れでお商売をされています。上の例(19万円

で買い取った古材は80万円で売買されておりました。

 古材倉庫グループ代表の井上さんは元々材木店の跡継ぎだったそうです。材木の

買い付けをしにオーストラリアに行った時に古材が大切に扱われ、それに価値があっ

て売買されているのを見て古材に価値がある事を知った。おりしも材木は建築戸数の

減少から苦境だったのでビジネスチャンスとして打って出たそうです。ただなかなかお

商売は大変でトラック1台でネットに古材買い取りますの広告を出して全国に買い付け

に行かれたそうですよ。こんな仕事で50人居た社員はたった2人になったそうです。

ただ時代が追い付くんですね。リサイクル法が出来て建物解体現場からの廃材をミン

チ処理出来なくなり分別しなければならなくなった。そこで『解体コスト』が古材を取りだ

す丁寧な解体と一般のバリバリ解体のコストに差が無くなった。仕入がし易くなった訳

です。それと並行してネットワークを造り仕入・保管をスムーズに出来る体制を作った。

これはコスト削減に欠かせぬ事です。そして啓蒙活動をして古材に興味を持ってもらう

努力をしたそうです。『古材』は今までは『フルザイ』と呼ばれて捨てられていた。それに

『コザイ』と名を付けて良さをPRして行った。また価格にもテーブルを作り透明性を高め

る努力をした。時代より半歩先を歩いた井上代表の作戦勝ちと言うところでしょうか。

 小池栄子さんが番組内でサラッと言った発言が面白かったです。

 『19万円で買い取ったものを80万円で売る。ボロ儲けですね。』

 『いえいえそんな事は無いです。ダイヤの原石と古材は一緒でいろんな工程を踏ん

  で手間暇をかけて商品に仕上げるのです。価格的には新材とだいたい同じくらいだ

  と思っていただければと思います。』

 古材には価格の基準やら強度、状態等がまちまちで流通価格が無かった訳ですから

それを整備し、全国にネットワークを敷いた事、またいつ売れるか分からない古材を各

材木店が管理している事などを考えるとなるほどの価格なのかも知れません。

 村上龍さんは『古材の価値を再発見する時代は豊かな時代だ』と言っていたのが印象

的でした。

 日本の木造家屋は30年、アメリカの木造家屋は100年、イギリスはなんと150年持たせ

るそうです。4代、5代の作業です。だから家を建てるのはアンラッキーな事だと感じるらし

い。ただ4代、5代後の子孫に遺す財産を創る行為だとも感じるんですって。ここら辺は

日本と違いますね。日本も戦前はそうだったし古材もリサイクルされていたんですが、

戦後バリバリ解体が増え、それと同時に古材の価値は無くなった。解体費用の観点から

古材の価値を放棄したんですね。

 古材建築をもっと知りたい人の為に番組内で紹介されたご夫婦のケースで建物完成

までの流れを簡単に紹介しましょう。

①住宅展示場などいくつも見て回ったけれども良い家に出会わなかったご夫婦が古材

 の建物を知り工務店に出かけます。そこでいろいろお話しをします。

②その話しを元に相談者の求める古材を工務店で探します。

③工務店さんと一緒に3時間かけて古材を見に行ってました。たくさんある材木の中から

 好きな古材を選びます。形や色、木の種類など選ぶポイントはたくさんあるので木を

 選ぶのはとても楽しい作業らしいです。

④古材は曲がったり太い所があれば細い所があったりしますし、昔の大工さんが削った

 跡やほぞ穴など表情がありますから、それをどう活かすのかが工務店の腕の見せ所

 みたいです。

⑤棟上げ・・・新材と古材のドッキング。フツーの家以上に施主さんはワクワクする嬉しい

 作業みたいです。工務店さんは緊張の一瞬ですね。ここには技術がキラリと輝いてお

 りました。

⑥棟上げから6カ月後に引渡。ちょっと時間はかかりますね。

ちなみに番組内の家で古材価格は79万円。もし新材オンリーでやれば81万円だった

と紹介されてました。

古材は鐇(ちょうな)と言う道具で削ります。凹凸があって単純に機械にかけられないので

なかなか若い職人の手には負えないのだそうです。

 さてここに古材ビジネスの難しさがあります。純粋な木材価格として見ると古材と新材

はほぼ同価格。今の家一棟に要する材木費は平均で全体の8%なんですって。大半は

手間賃な訳です。一方で古材は設計から大工の手間暇まで考えると残り92%部分が

かなりの割増になるのでしょう。工期が長いのもその現れです。井上代表は『もう少し

いい材木を使って100年持つ家を創りましょう』と提案していましたけれどもお金持ちは

別として一般人はコミコミの建築コストで評価しますからなかなかに受け入れがたい提

案ですネ。戦後古材が経済的な理由で再利用されなくなった経緯と同根の問題です。

私はこの提案には難しさはありますが、これは『有り』だと思います。ただ条件もありま

すね。それは建築の問題です。今は大工さんの技術がどんどん落ちて行っている。な

んでもマシンでやっちゃいますし、プレカットされた木材オンリーですから古材を使った

家など建てられない職人がどんどん増えています。職人のレベルが低下してしまうと

古材の市場がせっかく出来てもそれを使える職人の単価が上がってしまっては話しに

ならないのです。8%の材木費より 92%の手間賃その他が問題になります。

 また一見格好の良い建物でしたけれども古材を『見せたい』建物と言うのは必然的に

梁を見せる家になり吹き抜け部分が多くなります。節電が叫ばれる昨今の事情からする

とちょっとどうなんだろうと思いました。ココは工夫の余地がありますね。(改善出来るポ

イントだと思いますよ。)

 手間暇かけて地域に根差した物を作り、遺す事って大切だと思います。

 木は100年かけて強くなっていくのだから戦後の捨てる文化を戦前のスタイルに戻そう

ではありませんか。。。と井上代表はおっしゃっておられました。

 番組恒例の村上龍さんのショートエッセイです。

木と壁の家は暖かみを感じる。住み心地がいい。古い民家の佇まいは私たちを癒

す。井上さんの話しで、その理由がわかった。木は、材木になっても生き続ける。

自然材を使った家は、生命に囲まれていることになる。そして材木は、資源と効率

の見直しを促す。百年、千年と言う長期的視点で、資源と効率に目を向けると、二

つのキーワードが浮かんでくる。生命、そして日本固有の風土と文化である。

 『777万円で家が建つ』なんて言う会社さんは増えて、家の価格はどんどん下がって来

て居ます。合理化、省力化と言った企業努力で価格を抑える事に成功している訳ですか

らそれ自体が悪い事ではないのでしょう。選ぶのは消費者ですから支持された会社さん

が素晴らしいと言う事なのだと思います。

 時代の風潮で大工さんの仕事も変わる。鐇(ちょうな)なんて使えなくても仕事が出来る

訳ですから。ただこれが進むと古材は使えなくなってしまいます。職人の腕に支えられた

ビジネスです。古材を使う事に意義を感じる文化レベルをまず持ち、そこにはコストを支

払っても良いと思えるお客さんが増えなければマーケットは成長しません。

 マンションリフォームなんかても古材をアクセントに使ってもらえるケースも増えている

と井上代表は話していました。我々消費者がどれだけ安らぎを感じ癒されるのか。『作

品』が一点一点増えて行く事が大切ですネ。捨てる文化よりも物を大切にする文化の

方が私は好きです。経済的な合理性とリサイクルが良いバランスになる世の中の仕組

みが出来る事って素晴らしいと思います。その努力をしている人は輝いておりました。

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