カンブリア宮殿・・・ヤマトHD 会長 瀬戸 薫さん (後篇)
先週に次いでヤマトHDの瀬戸 薫会長のお話しです。
クロネコヤマトのあのカクカクしたトラックも『宅急便』を効率よく運ぶためにイチから創っ
たのだそうです。そう言えばあれは佐川さんやペリカンにはありませんもんね。
①荷室でもかがまないで作業できる事や②冷凍冷蔵庫を持つ事、③乗り降りしないで荷室
に行ける事などなど効率と安全を徹底して考えたそうです。
サービス面ではクール宅急便の開発の噺が取り上げられました。
クールがなかった時にも『魚』などの生鮮品を運ぶ事はあったそうです。昔は発泡スチ
ロールの箱に氷を入れるだけだった。夏場などは荷台は暑くなりますのでお届けした際
には既に腐っているなんて事もあったそうです。生鮮品の輸送クレームからクール宅急
便を考えたのですが、一部のみと言う訳には行かないサービスであり、全車に冷蔵冷
凍庫を積む事が当初は出来ずに保冷剤を使った冷蔵・冷凍ボックスからのサービスだ
ったそうです。(今は電気の冷凍冷蔵庫を備えているそうです。)
クール宅急便が出来た事によって、『産地の鮮度が都会でもいただける』様になった
わけです
瀬戸会長は『サービスが先、利益は後』と金言をお話しされておりました。なるほど
クール宅急便と言うサービスを創る事で、わざわざ築地の魚を宮崎に輸送するなん
てサービスが可能になった訳であり、新たな需要が出来て行くのです。
ヤマトさんは『家具』や『家電』も配送するそうです。ただ配送するだけでなく、家具を
組み立てたり、テレビや洗濯機を設置したりもするそうです。配送だけでなく『設置』の
エキスパートになる事で、配送の仕事を獲得して行っている。もちろんドライバーさんは
家具や家電の研修を受けて『プロ』としてのお仕事をして行くそうです
業界のリーダーがそれだけ小回りのきいたお仕事をして行く。。。素晴らしい事です。
また『倉庫』を活かせ。。。と言う事で、キャノンと組んで『はやメンテ』と言うシステムを
創ったそうです。キャノンの電化製品が壊れた際に、フツーならばお店に届けて集荷さ
れ修理されて戻って来ます。ただ最初の壊れた品を持ってお店に行くのがなかなかおっ
くうです。(気分的にも良くないですね。)
それが『はやメンテ』ではヤマトが直接家庭に出向いて集荷して倉庫内のキャノンの
修理部署に直送、即修理してまたヤマトに配送してもらう。従来は10日かかったものが
最短3日で購入者に届くのだそうです。安心できるサービスの提供によりキャノンのファ
ンを抱え込むお手伝いをヤマトがしている訳です。煩雑な伝票処理も全てヤマトが対応
するそうです。
まだあります。『何でも運ぶ』。仏像などを運ぶ包装材を開発しているそうです。布団圧
縮袋をヒントに作ったとの事ですが、発泡ビーンズと空気によりピッタリしたオリジナル
包装をしてしまう。なんとも見事な発明 ケーキを配達できるダンボールも研究中な
んですって。これは蕎麦屋の出前のあのマシンを見て考えたそうです。
これは例ですが、ヤマトHDは5、6年前は『宅急便の一本足打法』と言われたそうです。
が、一本足は弱いですよね。そこでムカデの100本足を目指し、スピードと安定を求め
た事業展開をしているそうです。そう、上記のサービスの1つ1つが脚の1本、1本だと。
今、ヤマトHDには49本も脚が出来ているって瀬戸会長がお話ししてましたよ。もっとも
弱い脚やまだまだ細い脚もあるけれども。。。
買物難民の解消にも行政を巻き込んで対応しているそうです。社会福祉協議会をか
ませてちゃんとビジネスにしている所もエライと思います。『まごころ宅急便』と言うサービ
スなんですって。被災地の岩手県大槌町でも社会福祉協議会を介してサービスを開始。
500円の配送料は今は社会福祉協議会が支援しているそうです。豚肉や野菜を届ける
だけでなく、健康状態などをヒアリングして、ちゃんとそのデータを社会福祉協議会にフィ
ードバックすると言うのですからエライサービスです。独居老人が独居じゃなくなる。。。
素晴らしいサービスだと思います。
村上さんが宅急便を斬る。。。と称して厳しい質問を瀬戸さんにぶっつけました。
『コンビニと一緒で、既に成熟段階に達しており、社会を牽引するパワーを宅急便は
失っているのではないか?』と。
瀬戸会長が切り返します。
『エンドユーザに荷物を届けると言う意味での宅急便の姿は変わっていないけれども
その前段階では各業種各業界にいろんな提案をする事によって劇的な変化を遂げ
ているモノがある。常に利用者のメリットを提案し、サービスの提供によってより大き
なベネフィットを提供し続けたい』と。
村上龍さんのショートエッセイです。
『瀬戸さんと話していると、宅急便の創始者である故小倉昌男氏とお会いした時の
ことが脳裏によみがえった。お二人とも紳士で、ロジカルで、かつ反骨の士だ。
ヤマトの宅急便が誕生し、進化して行く物語は流通、技術革新、情報、ネットワー
クなど、経済のあらゆる要素が織り込まれた心躍る叙事詩である。ニッチ市場の
開拓、巨大な需要の発掘、新しいビジネスモデルの構築、『考えること』によって
のみ、それらが可能になるのだと教えられる。』
ヤマトさんが偉いのは、自分の会社が良かったらええねん。。。と言う発想じゃない所
です。まずはサービスありきや。お客さんが喜んでくれて、その結果として自分が儲かれ
ばいい。今どきの大企業は刈り取る事に必死なんですが、ちゃんと実るまで投資し続け
る姿があります。
ムカデ経営と称して、それこそいろんな利便性を提供しています。村上さんは『宅急便
は成熟しつつある』と話していましたが、私には産業構造そのものを変えようとしている
大いなる企てをやっている企業に見えます。さてさて抵抗が激しい戦いですが無事勝利
出来るのでしょうか。物流界においては圧倒的にトップを走っている様に見えるし、事実
そうなんだろうと思います。日本には大きな穴がボコッボコッと開き始めていますがその
穴を懸命に塞ぐ努力をしている会社だと思います。
この2週に渡る『ヤマトHD』の瀬戸会長のお話しはとても興味深いお話しでした。
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