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カンブリア宮殿・・・医療法人徳真会 理事長 松村博史さん

 歯医者さんは進化しています。

 番組を見て率直にそう思いました。番組内で何度も出て来た医療と経営の問題。

 小さな歯医者は家内制手工業と一緒。なかなか日進月歩で進化する歯科医療について

いけないし、医療機器の更新も小さな所では対応できない。なにより医師の勉強に費やす

時間が取れなくなる。医療は勘と経験に頼るべきではない・・・そんな大きな流れが松村理

事長さんの考えにあるようです。

 歯医者に対する世間一般の不満とは、予約していても待たされる、独特の雰囲気、説明

なく治療される(歯を抜かれる事もある)、治療代の不透明性などなど。歯医者さんに限ら

ず医師は偉くて患者をみてやっている的な発想があるのでしょう。だからこれらの不満に

も無関心だった。今、歯科医院は全国に68000軒。コンビニより2万軒も多い数があり、

供給過剰の状況にあります。客が歯科医院を選ぶ時代になっている。

 徳真会が去年の12月に開業した稲城市の歯科医院は建て坪250坪。リラクゼーション

施設なども併設、8つの診療ブースがあって個室もあるそうです。これが歯科医院?と

思うスケールに度肝を抜かれますね。最新の医療機器が揃っていて治療費用なども

はっきりと提示されておりました。コンピューターが多用されていて歯の状況、何をどう

治療するのか、またそれに伴うコストも明示。8割の方の治療は保険内対応だそうです。

 徳真会についてちょっと説明すると、新潟県が発祥で全国25カ所に医院を持っており

グループ全体で年間70億円の売上がある。グループ全体と言うのは、徳真会は①医療

②経営、③スタッフ管理と言う部門を分けたからです。医療分野と、経営・スタッフ管理

にまずは分類し、経営部門は㈱ゼネラルスタッフと言う従業員100人の会社に分離。

続いて歯科技工士を専門会社に分離し、医院のそばに併設させた。(ワールドラボ社)

歯科医と歯科技工士が近くにいる事で治療のスピード化が図れるし、接客などのレベル

も上がる。ワールドラボさんはサービスを重視している徳真会ならではだと思います。

医師は700人、技工士さんも200人を有する堂々の歯科医院グループです。

 松村さんは『経営がダメな所は医療もダメな所が多い。家内工業的な治療と経営が

混然とした所では近代的な歯科医療は出来ない。』そうお話ししていました。

 適正に上げた利潤は技術に再投資する・・・そうも話しておりました。(供給過剰期にあ

る歯科医院業界でこの差別化は厳しいですね。)

 徳真会の特徴として3つのお話しが紹介されておりました。

①当日完了

 虫歯の治療がその日の内に終了する。歯型をスキャンしてセラミックのブロックから

自分に合った歯型を3時間で作ってしまい治療が完結してしまいました。治療費は5万

円。何回も通って治すデアゴスティーニみたいな治療の分割化でセラミックの型どりを

すると合計で10万円以上かかると言うからいいサービスだと思います。

②怖くない

 あのドリル音と振動が歯科の恐怖に繋がるのですが、レーザー治療だと双方がない。

レーザーの虫歯治療では術後の患部が虫歯になりにくくなると言うメリットもあるそうで

す。また保険適用にもなる場合があるらしい。

③歯を残す

 マイクロエンドと言う外科手術に使う様な高度医療機器を使って勘に頼らずに治療す

る事で、歯を抜かない治療も選択できる。番組では歯根の治療で他医院で治せず化膿

した方を眼に見える形で、しかも歯を残す方法で治療しておりまして、治療費は10万円。

患者さんはとても喜んでおりました。

 村上龍さんご自身はインプラントで歯を治されたそうですが、医師がかってに歯を抜い

てしまったそうです。松村さんは『歯をインプラントしようと思うと、1本30万円くらいかかる

ものです。歯の本数からいくと1000万円の価値が既にある。それを簡単に抜くのはどう

かと思う』とお話しされているそうで、龍さんはそれを見て、勝手に抜いた医師が納得で

きなかったみたいです。

 ちょっと脱線しました。

 歯科の技術は日進月歩。それについて行くのには資金力と時間が必要である。それ

を常に持ち続けることは経営体力が不可欠です。歯科医師の平均月収は45万円位

との事ですが、徳真会は平均的にはその倍くらい。技術力のある医師はさらに上の方

もいます、との事でした。医師には研修の機会がたくさんあって任意に研修が受けられ

る体制もあるそうです。医療は結局はマンパワー。厚遇し、更なる勉強の場を与え続け

る事で、スキルが上がり更に厚遇出来る様になる・・・。これでは確かに小医院と差がつ

いてしまう仕組みがあります。

 小池栄子さんが『いい病院』の見分け方について尋ねてました。

 松村さん曰く、『誠実であるかどうか。』

 しっかりと利潤を得て、再分配をしながら医師を育てたり、設備を更新し続ける。また納

税でもって社会還元をして行く事も誠実だからこその営みと解されている様です。

 歯科医院は現時点で供給過剰ですから年間で1500軒が休・廃業に追い込まれてる。

 選ばれる歯科医院にならなければならない状況であり、その為には歯科の分野を分け

たり啓もう活動もして行かなければならないと思う、との事でした。歯科医は今や衰退業

にみられるが、無くなる産業では無い。夢のある業種に変わって行くべきであり、松村さ

んはそれを、『サービスの質』に求めた。歯科医院で帝国ホテルクラスのサービスを提

供する事を目指しておられます。それはつまり『感動を与えられる技術とサービス』を

提供する事だそうです。その為には医師や技工士さんまでマナー講師による研修を受

けさせたり、マネジメントリーダーと言う院内を患者の視点でチェックする専門スタッフを

配置していました。とある1日の院内を紹介されていたのですが、4人の医師が170人の

予約患者を対応する。たまたまひとりの医師担当の患者の流れが悪くなって行くと、そ

れを見てこのマネジメントリーダーが別の医師に患者を振り分けるんですよ。予約で来

ている患者を待たせるのは罪だと思っているんです。医療はサービス業だと言うのは

冒頭の『医師が患者をみてあげている』と言う発想から180度の転換だと思います。そ

して家内制から脱却し、近代的な医療現場が出来ているからこそ到達した境地だと思い

ます。当たり前と言ってしまえばそうですが、医療現場では絶対にこれは当たり前では

ありません。何時間も待って診察3分・・・なんてところがザラですもんね。

 人に絡むすべてのモノがサービス業であり、医療もその典型の業種である、そう松村

さんはお話ししておられました。相手から言わずもがなの事を汲み取る力が大切であり

その感度を上げる為に、挨拶や掃除なども大切だと言うお話しも面白く聞いた次第です。

恒例の村上龍さんのショートエッセイです。

松村さん率いる「徳真会」の『ビジネスモデル』には、医療全体のヒントが含まれて

いる。命を救う医療を『ビジネス』と呼ぶのは私にも抵抗がある。だが非効率な病

院経営と勤務医や研修医の過酷な労働環境がヒューマニズムと言う美しい言葉

に隠蔽されているのも事実である。「徳真会」のように医療と経営を合理的に分離

し、コメディカルを増やす、それだけでも医療は崩壊から遠のく。松村さんは利益

ではなく、患者のために、合理性を追求した。その合理性には『学び続ける』と言

う大切な要素も含まれている。

 人に接するすべての業がサービス業だと言うのはとても納得できる言葉です。接点

がある場所にはすべて『感情』がある。そこから何を汲み取るのか、そのサービス競争

が当たり前のマーケットです。

 そう言う感度にまだ至って居ない分野が、競争から取り残された分野だと思う。そして

そう言う分野の大半に競争から遠ざける為の国費が投入されています。電力、医業な

どはその典型です。歯科医師会はちょっと力が弱いので、徳真会の様な『競争』に立ち

向かう企業が出て来ているのでしょう。村上さんのショートエッセイの中にも医療の崩壊

と言う言葉が出て来ます。競争に晒されてこなかったからこそ医療は崩壊の危機に接し

ていると思うのですが・・・。

 農業や電気、医療など公正な競争から守られると、どんどんと足場が弱くなってしまう

のが世の常です。一度保護したら上手に保護を取りはらわないと、結果、全滅してしまう。

TPPがどうのと言いますが、実際には今までの保護政策に対しての甘えがダメなのであ

ってTPPなどは大きな波が来てしまっただけの事。本来は波を責めるのではなく、『保護』

を反省しなければダメなのでしょう。歯科医療はたまたまその保護が半端だったからこ

んなに面白い医療法人が現れたと言う事なのではないかな~と思った今回のカンブリア

宮殿なのでした。

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