カンブリア宮殿・・・日本マクドナルド CEO 原田泳幸さん
今回(24・3・22)のゲストは日本マクドナルドの原田泳幸さん。
この8年間で日本マクドナルドは劇的に変わったと言います。変革の時代のリーダーシップ
について原田さんからお話しを伺おうと言うコンセプトの特番でした。
いろんな施策をやっていたのは知っていましたが、実はこんなに変わっていたと言う事を
まずはご紹介しておきましょう。
①年間売上 3867億円⇒5350億円に (1500億円アップ)
②年間客数 11億人⇒16億人にアップ
③店舗数 3800店⇒3300店にダウン
原田さんがトップに就いたのはマクドナルドが安売り競争をしていた時代でした。ハン
バーガーが65円や59円だったあの時代です。2000年の頃のマックは平日半額などの
施策を実施し、デフレの勝ち組と言われていた時代でした。
原田さんはマック改革として次の事を意識してやられたそうです。
①美味くしろ
今では考えられないですが当時のマクドナルドは電子レンジでチンしていたそうです。
新商品の試食をしても食べられる代物では無かった。それでスタッフにどうしたら美味い
モノが創れるのか?と聞いたそうです。『メイド・フォー・ユー』・・・注文ごとに作って早く
提供する事ですと言う回答はあった。ただその実現には、本当に30秒で商品が出せる
のかと言う問題と、設備投資の壁があった。原田さんは即、メイド・フォー・ユーを命じた
そうです。美味しさの復活の為に100億円の投資をした
今で言うとフライドポテトの美味しさアップの為に専用フリーザーの導入を図っている
そうです。できるだけ常温にポテトを晒さない事で美味しさが増すそうです。『3秒間』と
『マイナス20度』にこだわって味を追求しているんですって。
②値段を上げろ
値段を上げる為にまずは100円マックを売った。そして高付加価値の商品を投入して
行った。
100円マックは安売り戦略だとずっと思っていましたが、原田さんの考えは違っていま
した。美味しく生まれ変わったマックの商品を食べて貰う為の『体験の場』の提供だった。
一度失った顧客を再度呼び込むための投資です。そしてそのお客さん達に、本来食べ
て欲しい高付加価値商品を売って行く。カリフォルニアバーガーなどの一連の高価格帯
の商品を提案して行くわけです。
これでデフレの勝者、『マックは安い』と言うイメージを払拭して行く。あの頃は牛丼と
値下げ競争をしていましたね。牛丼は今でも消耗戦を展開中ですが、マックは違うステ
ージに立っています イメージの激変が上記の変化を支えているのです。
スタッフミーティテングの席上、原田さんは『改革の成功のkey は何だろう?』と問いか
けていました。スタッフはいろんな話しをしていましたが、それぞれ正しいのだけれども
本来の key は『業績だ』と話していました。業績こそ変革が正しい事の証明なんだとの事。
今、売りだしているハンバーガーはビバリーヒルズバーガーと言うモノでセットで740円。
村上龍さん、小池栄子さんも試食をしておりました。原田さん曰く 『一番お得感が高い
と感じて貰う事。期待値を裏切らない事』が大切なんです。
04年から何度となくマックは値上げを実施して来ています。その時、他社では円高還元
だとか色んな名目で安売りをやっていた。マックも100円マックはやったが安売りではな
い。原田さんの考えは明快で、『価値を考えないで値段だけを上下させてはいけない』と
考えているそうです。まずは価値を考えよ 円高還元とは価値を考えずに、価格だ
けを操作している行為でこれはイケナイと思っている、との事でした。
村上龍さんが質問します。
『なぜ当たり前を見失うのでしょうか?』
『頭で考え過ぎなんですよ。お客さんが食べた瞬間の目を見れば分かります。リサーチ
会社からデータを買っても分からない商売のタネが現場にはありますよ。』
今、マックの一部の店舗では、24時間のデリバリーサービスを試験的にやっているそう
です。1500円以上のお買い物と配達料300円を貰って配達をしている。コストの問題では
なく、新たな便利さで新たな顧客を掘り起こす努力をしているのだ、と言う事でした。
原田さんはマックの経営環境は少子化の影響等もあり悪化していると考えています。
その中で売上の実績を出す為には、①新規顧客の掘り起こし、②多頻度来店と言う
極めて当たり前のことを徹底する事だと考えています。その考えからデリバリー実験を
し、携帯会員へのクーポンの提供をやっている。携帯会員はチラシや新聞広告が3か月
前から動かなければならない事に対して、スピーディー、タイムリーな活動が出来る。。。
これにより多頻度来店を促しているのだとお話ししておりました。
『施策の採算性についてはどう考えるのでしょうか?』
『新規顧客を呼び込む投資だと考えています。やってはイケナイ事は売上低迷期に
新規ビジネス。とても危険です。新商品を中核ビジネスに繋げる事が大切ですね。』
マックの店舗も変革していました。
ドライブスルーが売上に大きく貢献しているのですが、サイドバイサイドと言う考え方で
注文レーンを2つにしたりお会計と商品お渡し窓口を分ける事で渋滞が緩和。それにより
新たな客を呼び込むことに成功しているそうです。ただサイドバイサイドはかなり複雑な
オペレーションが必要になっています。それを支えているのはアルバイトさんなんですっ
て。優秀なスタッフがマックを支える。OTタイム(注文を聞く時間)の秒単位の削減により
売上アップに努めているんですよ。原田さんは言ってました。『働きがいを高めることで
スタッフが活きいきと働けるものなんです。決してお金ではありません。クルーの満足度
をどう高めるか?と言う事にはとても注意を払っています。』
売上は上がっているのに店舗は減っています。これは凄いことだと思うと村上龍さんが
お話ししましたところ、500店舗の削減は財務が整ったから断行しました。現時点でもま
だ1000店舗は入れ替えたいですね、と原田さん。現店舗に関しても1/3は入れ替えよう
と言うのは凄い数です。
『リーダーは大胆に考え、慎重に行動しろ』・・・原田さんの哲学なんですって。。。
直営店とFCの比率もこの8年間で、7対3だったものを、3対7に変えてしまったそうです。
激変ですね。FCの社長さんが原田さんの経営は荒っぽいけれどもついて行く。。。と
語っておりました。
さて、この後は『特番』として経営者さんが観客として入っておりまして、原田さんに対し
て質問コーナーがありました。
それぞれの企業さんの具体的な質問で、質問内容も全然違う内容だったので、メモは
取らずに視聴していました。
白樺湖池の平ホテルの若社長さん(28歳の青年でした)が、経営の軸がブレてスタッフ
にも迷惑をかけている。どうしたら軸がぶれなくなるのか。。。と言う質問がありました。
これに原田さんは・・・
①新規顧客の為に何をしているのか?
②来店頻度を上げる為に何をやっているのか?
これを徹底して考えれば軸は定まって来ると思いますよ、との事でした。
マックがやっている施策の元もこの2点を徹底して考え、投資をして来たと言う事です。
これはすべてのお商売に共通する真理ですわなぁ~。でもこれが難しい。。。だから逃
げずに考えなきゃダメ それが社長の役割だと言う事なのでしょう。
社長は『職位』ではなく『職種』だと原田さんは言う。
その圧倒的な業績で、日本を代表する経営者になってしまったのでわかりにくい
かも知れないが、日本的なパラダイムでとらえると、原田さんはアウトサイダーだ。
しかし、グローバルに俯瞰すると、極めてオーソドックスな戦略と考え方の持ち主
だとわかる。
その亀裂は、日本にプロフェッショナルの経営者が非常に少ないと言う事実を
浮かび上がらせる。今、『アウトサイダーとしての視点』がないと、日本特有の非
合理性と閉塞を打ち破る事はできない。私は、原田さんと会うたびに、二人とも
アメリカ軍基地の街・佐世保の生まれであることが、とても誇らしく、うれしくなる。
経営者は『職種』だと言う原田さん。飲食店としての味の探求は当然のことであり、
付加価値の大きさ>お客さんの期待値・・・と考えているとお話しされていました。だ
からなんでしょうけれど『飲食業界の社長さん』とは一線を画していますね。
牛丼業界と争っていたあの頃から、見事にマックは違う所に行き、そこで大きな花を
咲かせてしまいました。企業イメージもさることながら、この8年間でものすごく土台が
堅牢になっています。さすがです。
今回のカンブリア宮殿はしばらくして再度繰り返し見た方がいいなぁと思いました。
飲食に限らず、全産業の社長さんの勉強になりますね。
『こうだ 』と言うのではなく、考え方のヒントを話す。座右の銘なんか関係ないし、
坂本龍馬やジョブズを尊敬もしない。坂本龍馬のココが好き、ジョブズの考え方のココ
が良いなぁ~とは思うけれどもね。『ジョブズに座右の銘は?なんて聞かないもんね』と
笑う原田さんはチャーミングでもありました
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