カンブリア宮殿・・・スターバックス会長兼CEO ハワード シュルツさん
今回(24・4・12)のカンブリア宮殿のゲストはスターバックスのCEOハワード・シュルツ
さんです。
スターバックスコーヒーがあるかないかで、都会と田舎を分ける・・・と良く言います。
スタバで日本の売上ナンバー1の渋谷店でコーヒーを愉しむお客さんの中には、地方から
やってきて 『渋谷のスタバでコーヒーを飲むことに憧れがありました』 と語る若者の
姿から番組が始まりました。
『スタバは憧れ』。長野ではスタバの長野進出嘆願で4000人の署名が集まり、函館では
地元の新聞の一面に進出の記事が掲載される程のお店なんです
スターバックスコーヒーの本社はシアトルにあります。本社屋はお洒落でした。3000人
のスタッフが働いているそうです。カッピングと言う全世界から集めて来たコーヒー豆を
チェックする作業を黙々とやる姿が放映されました。おいしいコーヒーには妥協をしない
姿の象徴として、敢えて番組で取り上げたのだろうと思います。日本のお店で出す豆も
アメリカから入って来ているとの事でした。(30カ国から仕入れているそうです。)冷めて行
く中で、酸味やコクが変化していくので、何度も何度もチェックして豆選びをしているそう
です。
シュルツさんの社長室には日本人画家の白髪一雄さんの絵がかかり、イチローさんの
グローブが飾ってありました。イチローさんとはご友人なんだそうですよ。
最初のシュルツさん語録です。
全世界のサービス業で事業を続けて行く中で大切なのはお客さんのお財布からカネを
獲るのではなく、お客さんとの関係を構築する事だ。
元々スターバックスはコーヒー豆の販売を手掛ける3店舗のお店からスタートしました。
シュルツさんがイタリア・ミラノを訪れた際に、エスプレッソバーで感動したことから運命
の歯車が回転します。深い味わいのコーヒーを飲みながら語り合う姿に彼は衝撃を受け
たんですね。コーヒーを出すだけでなく、語り合う場、人間関係を築く場を創ろうと直感す
るんです。当時のアメリカは薄いアメリカンコーヒーが主流でした。深煎りの濃いコーヒー
そのものが革命だったそうです。それプラス長時間ゆったりと出来る居心地の良さを演出
したんですね。憩いの場の提供です。
アメリカのお店でお客さんが言ってました。
『従業員さんの感じの良さ。奥さんに次いで好きだ』と
味もさることながら、『空間の演出』が支持され、それが都会的だと感じられ『象徴』にま
でなっている・・・と言う事なのでしょう。
スタバは今や世界58カ国。売上は1兆円の世界企業になっています。
村上龍さんは『直感と確信』と言うテーマで斬り込みました。
イタリアでエスプレッソバーに行ったアメリカ人はたくさん居たはずなのに、なぜシュル
ツさんだけがそれをピックアップ出来たのでしょうか?
シュルツさん『直感を大切にしています。また好奇心が旺盛なんですよ。また事業を起こ
す時の燃える様な感覚も常に持っています。』
龍さん 『スタバはアメリカの新しい文化を創りましたね』
シュルツさん『本当に創りたかったのは、居心地の良い場所なんですよ。深煎りコーヒー
ではありません。』
龍さん 『なぜ確信できたのでしょう?』
シュルツさん『エスプレッソバーは自分の家に居る様なくつろぎがあり、快適だったんです』
スタバが日本にやって来るのは1996年。北米以外で初だったそうです。今や国内955店
もあるそうですよ。
日本への上陸も拡大戦略の一環だった訳で、アメリカ国内では猛烈な出店攻勢をかけ
たそうです。隣のスタバとの距離が50mしかないと言うところまであったそうです。
成長分野と見るとライバルが現れる。マクドナルドなどがコーヒーのお客さんを奪い始
め、スタバと言えばシアトルの代表と言われていたのに、店舗が氾濫する事で『飽き』が
芽生えます。2008年にはアメリカで赤字に転落してしまいます。
2007年の大量出店が飽和感を醸成。進化を止め、ブランドに安住したことで、急速に
お客さんが離れて行った訳です。
ここでシュルツさんは考えます。
600店舗の赤字店舗を閉鎖し改革に着手する。具体的な例では、環境に優しい店づくり
と言う事で徹底したリサイクル品で店内をレイアウトしたお店を創った例が紹介されまし
た。リサイクル品で・・・と言う事で、今までの店内とは全く違ったコンセプトになったんで
すね。店内の雰囲気もガラリと変わる。またアメリカでも5店舗しかないそうですが、ワイ
ンやビールなどのアルコールを提供する店も創っているそうです。
離れたお客さんを呼び戻す事は容易ではないと思うのですが、2011年には前述の売上
1兆円を達成し、業績はV字回復。アメリカの名経営者に選ばれたとの事でした
村上龍さんの次のテーマは『急成長を支える哲学について』でした。
龍さん 『事業はスタート期と拡大期で大きく異なると思うのですが・・・?』
シュルツさん 『ビジネスは子供を育てるのと同じです。最初の7年は徹底した刷り込み
をやり、その後は愛情を持って育み、成長させて行くのです。』
『成長は麻薬の様なものです。取りつかれ易く、ミスを覆い隠してしまいます。
肝心な事は投資が継続し続けられるかどうかです。』
『成長が戦略では無くて、戦略の結果、成長が生まれるのです。』
『成功は当たり前ではありません。成功はチームのものです。ビジネスは
チームスポーツだと思います。自分ひとりで勝ったのではないのだから
ひとり勝ちはダメですね。』
ひとり勝ちでは無いと言う現れが、パートさんにも開放されている健康保険制度とビー
ンズストックと言うストックオプション制度です。番組では利益優先のアメリカにあって、
スタバは従業員に優しい会社として上記の2点が紹介されておりました。健保だけで
2000億円を投じているそうです。
それは、シュルツさんが子供の頃、家庭が貧しくて困った経験を持っており、貧しさが
恥ずかしかった。怪我をして解雇された父親への想いからこの制度を維持していると
の事でした。良心・魂を持った会社であり、理想を現実的に追っている・・・と話してお
られました。
番組のラストでは、シュルツさんが日本のスタバの店長会議を仙台でやられた事を
取り上げ、被災地の従業員ともサプライズでお会いされておりました。社内でも募金を
募り、シュルツさんも100万ドルを寄付されたそうです。
従業員を大切にする・・・お父さんが怪我で失職し、家族が困ったことがあるからこそ、
被災された従業員にも想いが馳せられるんですね。
なるほどスタバの企業風土の一端を垣間見た気分です。
村上龍さんのショートエッセイです。
シュルツ氏と『スターバックス』の歴史を紐解くと、アメリカのビジネスシーンのすさ
まじいダイナミズムが伝わってくる。投資家への説得だけを取っても、信じられない
ような熱意と忍耐を必要とする。そして、長い助走期間を経て、やがてそのビジネス
は急拡大し、あっという間に世界を制覇して、まるで『生態系』のような複雑さを見せ
るようになる。
だが、その核は、意外にシンプルだ。顧客と従業員の喜びと満足、それに尽きる。
そのシンプルな原則を守りぬくために、シュルツ氏は、勇気と合理性に充ちたチャ
レンジを続ける。
スタバのシュルツさんはとても素敵な人物だと感じます。思うのではなく、感じるんです。
オーラと言うのかな。きっと村上さんも同じ思いなのではないかな。味にこだわるのは当
たり前で、その上で、『雰囲気・居心地』を売っている。これは面白い事だと思います。
安売り、低価格などは一線を画し、お洒落、都会的と言った付加価値を演出し、その
評価を得ているのです。お客さんのお財布からお金を獲るのではなく、お客さんとの関係
を構築する事が事業だと言うシュルツさんの考えは深いと思う。
そんな彼をしても拡大に舵を切った時には、ブランドに安住してしまうもんなのですね。
普通ならここで崩壊するのですが、より深いところでお客さんと繋がっていたのでしょう。
改まると離れたお客さんの呼び戻しに成功します。これはアメリカと日本の差もあるかも
知れません。アメリカの方が良し悪しの評価はシビアなので、リターンマッチが出来たと
言えそうな気がします。また安売り競争と言うか、カロリーをいかに安価に摂取するか
的な消耗戦を戦っていたのではないと言うのもV字回復の要因だろうと思います。
番組のラストの村上龍さんのショートエッセイを聴きながら、本当に美味しいコーヒー
をいただいた時の余韻に似た至福の時を過ごせました。
シュルツさんと言う方は、日本人的な心根の持ち主なんじゃないでしょうか。また目指さ
れている理想像と言うのは昔の日本企業が持っていた美徳がふんだんにあって・・・。
だから波長が合うと言うか、彼が持つオーラーを感じられるのではないか?と思ったので
す。最近のカンブリア宮殿に登場する名経営者達にない大らかさと言うか志と言うのか。
シュルツさんと一緒に仕事がしたいなぁと思わせるご仁でした
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