NHKスペシャル MEGA QUAKE Ⅱ (2) 津波はどこまで巨大化するのか?
NHKスペシャル 『MEGA QUAKE Ⅱ (2) 津波はどこまで巨大化するのか?』。
先週の(1)では、地震についてでしたが、今回は津波について現在分かっていることを
報告する番組でした。
CGがリアル過ぎて恐怖感がありましたね。
東日本大震災は『常識を覆す津波』だったそうです。毎回災害の度に出てくる常套句で
すが、災害や津波を研究されている学者さん達は、二度と『常識を覆さないため』に懸命
に研究を続けていると言う感じでした。
なぜ、常識が覆されたのか?
①陸に近い部分でまず地震が起こり津波が発生する。続いてやや沖側でさらに地震が
連鎖して地震が発生する事で津波も発生する。その時に第一波と第二波が重なった
り、波を大きくしてしまう事がある。
②海底地滑りにより、地震の規模はそれほど大きくなくても巨大な津波が発生する事
がある。
番組で紹介されたのはこの2つです。
東日本大震災は①の方で、宮城沖でーの最初の地震で2mの津波が発生。その後の
連続する地震の影響で2mが7mに拡大してしまったそうです。それが宮城県を襲い、総
じて15m以上の津波になってしまった。南三陸町では33mもの津波になったと言う事です。
福島第一原発には福島県を襲った津波に、宮城県を襲った津波の余波が重なって巨
大化してしまったそうです。
地震はほぼ発生する場所並びに地震の規模は正確に予測ができ、時期だけがなかな
か分かり難いと言うのは、先週放送の(1)でやっていました。しかし、津波は『波が重なる』
事で大きくなってしまう・・・と言う事なんですね。
南海トラフの地震予測ではマグニチュード9クラスが発生すると言われています。過去
定期的に大地震が発生しているのは古文書でも明らかなんですね。しかしながら地層の
研究による津波の被害状況を研究すると、南海トラフに面した地区で全然地層の堆積
状況が違っている。つまりは津波の規模が大きく異なっているんですって。
①の波が重なる場合でも、重なる前に第一波が陸に到達する所もある訳ですね。そし
て②に至っては、石垣島とその周辺と言う狭いエリアで、石垣島だけを巨大津波が襲っ
てしまった歴史があるそうです。(石垣島の明和大津波と呼ばれるモノは地震はそれほ
ど大きくないのに、海底地滑りが発生したために巨大津波が襲ったそうです。)
石垣島には明和大津波の際に500m沖合から浜に打ち上げられた220トンの浜さんご
が今でも見られます。津波のパワーと言うのは強烈なんですね。
南海トラフで分かっているものだけで300カ所以上の海底地滑りの跡があるそうです。
同じ所で海底地滑りが発生するのか、それても新たな所で発生するのか・・・。それに伴
って巨大津波が発生する訳ですから、地震ほど被害予測は簡単ではないみたいです。
東日本大震災でも宮城県沖220キロ、水深7700m付近で海底地滑りの跡があるそうで
すよ。
大阪では東南海・南海トラフの地震による津波の想定が今まで2.9mだったものが、6m
に変更されたそうです。これは梅田周辺にも津波がやって来ると言う事ですし、海から10
キロ離れた大阪城付近まで津波が到達するという予測です。横浜では相模トラフの地震
で護岸の高さが現在3mなのだそうですが、それを越えて市街に津波が流入する見込み
なのだとか。
怖いのは地震による液状化により、護岸そのものが倒壊する恐れもあると言う事と、
湾岸のコンビナートが同じく液状化により倒壊すると油などの可燃物が海に流れ出し、
燃えた状態で市内に海水が流入する恐れまであると言う事です。この炎は横浜だけで
なく、東京湾の奥の東京にも流れ込む・・・と言う被害予測もあるそうです。
番組ではラストに視点を日本国内から世界に変えておりました。
『巨大地震の連鎖』と言うテーマです。これは先週の(1)でも語られていましたが、今回
はスマトラ沖の地震の研究から考察されておりました。スマトラ沖の地震の研究はサンゴ
を見るとほぼ地震の発生年度が分かるそうです。それによると200年ごとに地震の周期が
あって、最近のモノは1800年頃。つまり2000年ごろが次の周期に当たっていたそうです。
そこに津波の映像が記憶に残る2004年のマグニチュード9.1の大地震が発生。そこから
2005年にマグニチュード8.7、2007年にマグニチュード8.4の地震が発生しています。
200年ごとに連続してマグニチュード8クラスの地震が集中して発生しているのだそうで
す。それがまさにスマトラで発生している。20年程度集中するんですね。チリの大地震、
東日本大震災・・・これらもその一環で発生している地球規模の現象ではないか?と解
され、ハワイにある津波の観測所で、環太平洋エリアとして津波を計測、研究しようと
言う動きになっているのだそうです。
スマトラ沖の地震を研究している学者さんは、東日本大震災は『集中して巨大地震が
発生する始まり』の可能性もあると警鐘を鳴らしておられました。
以上が、本番組の内容です。
先週の地震の時と違って、津波は単に地震が発生して生じるモノではなく、連続する
地震や海底地滑りなどによって、どんどん巨大化してしまうモノである・・・。つまりは複
雑怪奇でなかなか予測が難しいモノなのだと言う事が分かりました。
さて、この番組を見ていて『原発再開』と叫ぶ電力各社や政府の方々はどこまでこの事
実を把握しているのだろう?と言う事が改めて心配になりました。御用学者さん達の甘い
基準は『第一波』のみの計算ではないのか?と言う心配があります。海底地滑りの跡は
まだ300カ所しか見つかってないそうです。どう計算するのでしょうね。
そして『再開』以前の問題として、今が巨大地震の頻発期に既に入ってしまっている
とされているのに、福島第一はあのまま、浜岡も防波堤のかさ上げがなされていない。
かさ上げそのものだって何mにすれば足りるのか?
福島第一原発は防波堤は越えたですが、タービン建屋は無傷で残り、その奥の原子
炉建屋は周囲からの津波の流入による電気系統のダウンで水素爆発が発生してしまい
あの無残な姿になってしまったそうです。そうすると単に防波堤の高さだけが問題なので
はなく、津波は横一列で押し寄せるので、原発前面の護岸だけでなく延々と防波堤を
設置するか、城壁みたいに囲い込むかしなければ護れないはずなのですが、政府も
安全を検討する方々も限定的な『高さ』にだけこだわっておられます。
番組に出られた地震学者さんや津波学者さんはとても謙虚に、反省して、次なる被害
は出さない為の研究をされているのに、御用学者さんを使って『悪知恵』を働かせる方
々はザルみたいな『常識』で再度、検討しているみたいですね。
1000年に一度の地震がたまたま発生した。次はまた1000年後・・・。
そんな感覚の文化系の人間が舵取りをしているんじゃないですかね。技術の判断、
安全性の判断は『エンジニア』に任せるしかないですし、『エンジニア』も良心を持って
謙虚になるべきなのだと思います。
官僚や東電も事故を起こした責任を個人に問うべきだと思います。事故は誰だって
起こしたくて起こすモノではありません。ただ、不幸にして起こった時には一般の事故
ならば加害者は責任を取るはずです。原発は被害がはるかに大きい。この被害の責
任は責任者が負うべきで、その中に『御用学者』も加えるべきなのだろうと思います。
そしてその事実をもって、これから判断すべき『安全性』に対する判断を学者さんは
すべきです。政治屋さん達も然り。
巨大地震の頻発期だと分かっているのに、不幸にして巨大地震がまた発生した際の
原発事故は重犯ですから厳罰化が当然ですね。
経産省や保安院、電力各社に内閣、野田さん。それぞれこのVTRを見せればいいと
思います。地震頻発周期にあるのに『放置』してしまっている責任をまずは感じて貰った
方がいいと感じました。
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