カンブリア宮殿・・・ 高齢社 会長 上田研二さん
今回(24・4・19)のゲストは『高齢社』と言う人材派遣業の会長をしておられる上田研二さん。
上田さんは元々東京ガスに勤務。その後、赤字会社に出向して企業再生をやり、その後
に『高齢社』を設立したのだとか。
高齢社さんは名前の通り、高齢者(60歳以上75歳未満)であることが登録資格になってい
る高齢者さん達を専門に派遣する人材派遣会社さんなんですって。
60歳以上の方を高齢者と呼んだら叱られてしまいそうですが、洒落の気持ちで名前をつ
けたそうですよ。
職がないと言われている時代。まして高齢者には厳しい時代ですが、高齢社さんへの
求人依頼は100社ほどから来ているそうで、時給も1000円程度と思ったよりもイイ感じ。
就労率は54%で人材派遣業全体の就労率よりも高率で推移しているそうです。
村上龍さんは『高齢社』さんを、素晴らしい会社、規範になる会社だと思うと冒頭評さ
れており、思わず高齢者を雇いたくなる巧さがあると言っておられました。
なぜか?
高齢者は毎日が日曜日。『休日出勤はお任せ 』
と休日の割増手当等を無くする事で委託先にメリットが出る様にしておられる。
また 『高齢者は即戦力 』
要免許の職種で、かつ今までにも経験している即戦力をPRしている。
『アナログで良い味だします 』
PCなどは苦手かも知れませんが、これまでの経験を活かして、アナログな訴求方法で
営業のお役に立てる。若い人にない発想・手段を持っている。若い人が学ぶ場を提供す
る事も大いに期待されるんですね。
高齢社さんは7期連続の増収となっているそうです それだけ需要があると言う事で
すね。
上田さんは高齢社の存在は、『技能の継承の問題』だとお話しされておりました。
景気がおかしくなり、多くの企業でリストラが敢行されました。その中で本来継承される
べき技能がされていないんじゃないか?そのお手伝いをしようと思いスタートしたのであ
って、金儲けの為ではないそうです。
上田さんと言うご仁、『お金第一の発想ではない素晴らしい経営者』でした。
社員さん達に課しているのは次の3つ。
①週30時間以内の勤務。②働く日は自分で決める。③給料は月8万円~10万円。
①は社会保険の関係で制限をし、②は病気や趣味などを考えての措置。1人分の仕事
を2名でやるワークシェアリング的な発想です、と笑っておられました。
期末には利益の30%は社員さん達に還元されているそうです。お金じゃないんです。
お金中心じゃなくて、社員を大切にします。社員さんは派遣先の企業を大切にして下さ
い、と社員さん達にお話しになられているそうです。
ご自宅で、奥さんとお話しし、お孫さんも遊びに来られた団欒のシーンがありましたが
今、こんな家庭はないんじゃないかと言う位に、古き良き家族の姿がありました。
素敵な仕事をするには素敵な家族を持つことからはじめなきゃダメなんだなぁ~と
思いましたよ
村上龍さんが面白い質問をしました。
『人間にとって働く事の意味ってなんでしょう?』
『生きている喜びです。社会に役立つ事です。』
ここで上田さんが経験した企業再生のお話しに移りました。
数億円の赤字があり、巨額の借金があった東京ガスの子会社で、誰もがやりたがらな
かった社長の職に上田さんが就任します。
その際に、『リストラはしない』と宣言し、『赤字・借金の解消』を約束、何年後の周年行
事は帝国ホテルで1000万円のお金をかけて盛大なお祝いをやろうと宣言し、それを実行
したのだとか。
リストラは間違っている。社員を切る前に社長を切れ。会社の経営の99%は社長の責任
であり、失敗した時にはまず社長が腹を切るべきだ
子供の頃、工場の責任者だったお父さんが失職し、家庭が困窮した経験を持つそうで
だからこそ、社員を困らせてはイケナイと思われているそうです。
何か神様みたいな方に見えます
この後、高齢社さんを襲った危機が放映されました。
業績不振の大手メーカーが、一挙に70人の派遣の更新をしなかったそうです。それは
仕事を失う事と直結する訳です。この危機にも上田さんは立ちあがり、自ら営業に行く姿
が放映されました。
上田さん、素敵な語録を遺されました。
①売れない理由を相手に押しつけない。
②売れない理由を不況のせいにしない。
③売れない理由は自分の中にある・・・。
外部要因のせいにしないで、コツコツと少しずつでも雇用して貰えれば、きっと徐々に
雇用は増える。それだけ優秀なスタッフを抱えているのだから・・・と言う事なのでしょう。
高齢者の経済的な事情を村上さんは、2対6対2 と言う数字で表現していました。
この数字は定年後の生活だそうで、上の2割は余暇に興じてゆうゆう暮らせる方。
下の2割は定年、即、困窮する方であって、6割はどっちつかずの状況なんですって。
年金事情と相まって、かなり深刻な数字です。
ただ上田さんは『高齢者には必ず仕事はあるんです。汗を垂らす量が少ないから出会
わないだけです。』と語っていました。これはご自身に発破をかけているのかも知れませ
ん。
本来は高齢者が今までやって来た仕事を活かした仕事に従事出来るのが一番良い
形であり、何も高齢社でなくていい。全国にいろんな業種ごとの職場が出来たら良いと
思いますし、全世界に拡大出来たら素晴らしいと思って頑張っている、との事でした。
以前の党代表選で、菅直人元首相が、『1に雇用、2に雇用、3に雇用』と連呼した
ことは記憶に新しい。だが、雇用はまったく改善していない。とくに、退職後の高齢
者の再雇用に関しては、特別なスキルやネットワークを持つ場合を除くと、絶望的
な状況にある。上田さんの高齢社は、東京ガスの下支えを得て成果を上げている
が、率直に言って規模は限られている。だが、その取り組みは、多くの示唆を与え、
あらゆる業種、業態の規範となり得るものだ。政府に期待してはいけない。雇用に
関しては、個人、企業、地域社会などの広範な連帯が不可欠であると、高齢社は
実証している。
東京ガスだから・・・。意地悪な見方をするとそう思えます。ガスの検針や開栓、閉栓の
お仕事は確かにご高齢の方が来られて対応されています。一軒一軒の人海戦術だし、
引越しが土日に多いことから見ても、双方にメリットがある巧い隙間を発見されたなと
思います。上田さんは東京ガスの検針員から理事にまでなられた方であり、また子会
社の再建も果たした優秀な経営者故に、スキルとネットワークを活かして営業をされて
いる・・・と言うのも『なるほどな』と思うものです。なかなか誰にでも出来る技では無い。
ただ村上さんが提示した、『2対6対2』と言う数字。世の中がおかしくなると、高齢者の
8割が困窮すると言う大変な値です。そこを下支えすべき年金も破綻しかかっている。
これでは日本が廻らなくなります。その為には『高齢者の雇用』の受け皿をキチンと
作っておく必要があって、たまたま東京ガスと言う土壌から高齢者の雇用の花が開いた
と言う事なんですね。まだまだ小さな花だし、ひとつだけではいずれ枯れて行ってしまう。
業種ごと、地域ごとの細やかなケアが必要になるだろうから、大きな会社でなくて、小さ
な花がお花畑を作るが如き状態にして行かなければならないのではないか?
村上さんのショートエッセイにはそんな思いが込められているのだと思います。
いつものカンブリア宮殿は『サバイバル』をいかに勝ち抜いて来たのか?と言うテーマ
が多い中で、今回のカンブリア宮殿は心に風穴を開けられた気分でした。
辣腕の経営者にはない神々しさを感じた上田さんなのでした。
番組では、上田さんが高齢社の設立とほぼ同時期にパーキンソン病を発病し、運動能
力が低下して行く中で、発声などの訓練も受けていると言う紹介がなされました。
上田さんは病気の事実を知って、多少は落ち込んだけれど、すぐに諦めました。また
困難に立ち向かうのは楽しいとも発言されておりました。会話の端々にユーモアを交えて
お話しする氏の姿に強靭な精神力と言いますか、器の大きさを感じました。
高齢社に新卒の女の子が、他所の内定を蹴って入ったと紹介されておりました。この
女性も素晴らしいと思います。ぜひ、この花を立派に育てて欲しいと思います。ご病気
をされている中で、ネットワークが活かせなくなると元気が無くなってしまいそうでちょっと
危惧します。業界、地域が連帯して・・・と村上さんの声がこの放送を機にしっかりと届い
て欲しいと思います。
| 固定リンク
「カンブリア宮殿」カテゴリの記事
- カンブリア宮殿・・・ハローデイ 社長 加治敬通さん(2013.12.19)
- カンブリア宮殿・・・株式会社シャルマン 代表取締役会長 堀川 馨さん(2013.11.07)
- カンブリア宮殿・・・ナカシマメディカル 代表取締役社長 中島 義雄さん(2013.11.01)
- カンブリア宮殿・・・トレジャー・ファクトリー 社長 野坂英吾さん、BSIZE 代表 八木啓太さん(2013.10.25)
- カンブリア宮殿・・・コッコファーム 会長(創業者) 松岡義博さん(2013.10.18)
コメント