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カンブリア宮殿・・・富士フィルムHD 代表取締役・CEO 古森重隆さん

 先日コダックが経営破たんをしました。

 カメラはフィルムからデジカメに移行してしまいましたから『時代の流れ』、やむを得ない

ものと思っておりました。コダックとトップ争いをしていた富士フィルムも相当に厳しいのだ

ろう。化粧品やデジカメでも富士フィルムと言う名前は見かけるので、苦難のレポートを

やるのかな?そんなイメージで番組を見始めました。

 ところが・・・番組を見終わった感想は、富士フィルムの力強さに感動すら覚えました。

 さてさて古森さん。東大アメフト部のOBで体育会系と力強く語る姿は年老いても凛々しく

力強さを感じさせるご仁です。

 富士フィルムは神奈川県南足柄町にて、1934年に設立された会社です。

 フィルム界の巨人、コダックに追いつけ・・・と言う『挑戦者』の立場で経営を続けて来ま

した。ところがデジカメの台頭によって、主力のカメラ用フィルムの売上は激減します。

ピークから10年間でカメラ用フィルムの売上は1/10になってしまう。

 それを私も実感していますから衰退する会社と言う勝手なイメージを持っていたんで

すね。

 でも実態は違っていまして、2000年の売上1.4兆円⇒2011年売上2.1兆円に実は増えて

いるんです。化粧品のCMは時々見かけますね。主力分野こそ衰退しましたが、実は別

の分野でかなりの善戦をしていたんです。

 善戦のキーワードは『新たな稼ぎ頭を育てろ』です。

 化粧品はブランド『アスタリスト』を発売します。肌に潤いを与えるとても良い品物の様

です。フィルム会社だった富士フィルムがいきなり化粧品に行くと言うのが素人の私には

今まで理解できていませんでしたが、実はカメラフィルムの技術が化粧品にピッタリだっ

たそうです。アスタキサンチンと言う肌の老化を防ぐ物質の存在は分かっていたが水に

溶けないので化粧品として活かせなかった。それが富士フィルムのナノ化の技術で水溶

性を持たすことに成功し、肌に浸透する化粧品を創れるようになった。消費者がこの化

粧品はイイと言うのは当然なんですね。

 医療分野で肺がんの診察をサポートする技術も紹介されました。画像処理から派生し

て、過去の症例の画像を参考に医師に情報提供が出来るシステムなのだとか。医療用

のフィルムを通して、医師から要望をヒアリングし、コツコツと商品を開発している感が

ありました。

 破綻したコダックと対極にある富士フィルム。その差は『事業構造改革』です。

 『自動車が無くなったトヨタ』を想像するとその衝撃が分かりますと村上龍さんが話して

ました。カメラ用のフィルムと言えば、今は昔の物語と感じますが、実は富士フィルムの

写真フィルムのピークが2000年なんですって。思ったよりも最近の話しだったんですね。

そのピークから1年で25~30%売上が減少して行った。その衝撃は・・・凄いですよね。

龍さんがコダックには無くて、富士フィルムに有ったモノって何なのでしょう?と尋ねると、

①チャレンジャー精神、②他分野の幅の広さと古森さんは即答しておりました。

 他分野の選択は、技術力が活かせる分野を探しましたよとのこと。

 フィルムと言う主力商品を突き詰めて考え、お隣の分野を狭く捉えずに、一見畑違い

と思える分野をも広く検討したんですね。その横串が『チャレンジャー精神』だった。

 村上龍さんが『富士フィルムは大企業病にかかっていなかったんですね』と言うのが

まさにドンピシャで、2番手だったからこその『強い会社』だったんですね。

 ここで番組が紹介したのが日本の家電業界の赤字額。液晶テレビの衰退で立ち直れ

るのだろうか・・・と言う惨憺たる状況。

 実は液晶テレビで富士フィルムはしっかり儲けているのでありました。

 台湾の液晶テレビメーカーの社長さんが、富士フィルムが無ければ液晶テレビは作れ

ないと言ってました。実は液晶パネルの偏光板に使用するタックフィルムと言う商品で

富士フィルムは世界シェアの70%をキープしており、幅2m超のタックフィルムなんて言う

代物になると世界で富士フィルムしか作れないのだそうです。

 そしてタックフィルムは国産品なんですって。30年前から研究開発をしており、バンド式

と言う製法が主流の中、ドラム式なる技術を開発し、世界のトップに躍り出た。

 タックフィルムの新工場が熊本に出来た2006年と言えば、液晶テレビ vs プラズマテレ

ビで競っていた時代。そんな中で液晶テレビに賭けて多額の設備投資をする所が大胆

です。龍さんが、あの時点で液晶に賭けたのはどうしてですか?と質問したのに対して、

いろんな方と会い情報収集をしましたよ。その結果、液晶テレビが勝つと思ったので大

胆に投資しましたと笑っていました。『賭けた』のではなく、古森さんの頭の中では当然

の投資だった様に感じましたネ。

 『攻めの経営の神髄とは?』

 その答えが新たに作った研究所。1000人のいろんな分野の研究者を集めて、オープン

な形で研究している。医学、化学、光学・・・分野を横断する形で『技術』を活かして行こう

とされているのでありました。

 フィルム・・・と言ってもカメラ用のフィルムの面影は全くない透明のシート状のモノでし

たが、熱を遮断する透明のフィルム・・・建築分野なんかで使うのでしょうか?や、電気

を通す透明なフィルム・・・誘電性フィルムと言ってましたが、フィルムのくせに電気を

通すんですよ。応用したらなんだか便利に使えそうです。こんな研究をやっているんです

よ・・・との事でした。

 その研究所にはフクロウのオブジェが有りまして、『ミネルバの梟』と書いてあります。

 ミネルバの梟と言うのは黄昏に飛び立つ・・・つまりはコアな商品の衰退の前に、新た

な分野を目指して果敢に飛び立って情報を収集し、対処して行こうと言う象徴なんです

ね。

 世の中の変化がドラスティックに激変する中で、ダイナミックに正しく賢く挑んで行ける

かどうかなんですよ。そしてそれを支えるモノは『技術力』です。

 この言葉を語る古森さんは東大アメフト部を感じさせるゴツゴツした体育会系の闘志

と、素晴らしい判断力、そして実行する身軽さを感じさせるなんともスマートな方に見え

ました。

 村上龍さんのショートエッセイです。

『自動車が売れなくなったトヨタをイメージして欲しい。富士フィルムが直面した危機

は、まさにそれくらい恐ろしいインパクトを持ったものだった。

外部の変化に適応するためには、自身の変革が必須となり、それは自ら変化を

生み出すことにつながる。従業員7万人の大企業が大きく舵を切る困難さは想像

を絶するが、古森さんは断固としてやり抜いた。変化に必要なのは、新規の資源

ではない。それまだに培った技術、知識、人材などの再編と、最適な応用であり、

実現するためには『考え抜く』以外、方法がない。

富士フィルムのサバイバルは、日々の研鑽の蓄積が、無限の可能性を育むこと

示唆している。

 富士フィルムの認識が間違っておりました。

 先日カメラを買ったのですが、迷いに迷った挙句にパナソニックを選びました。

 オリンパスやニコンなども検討したのですが、富士フィルムは選択肢にも入っていませ

んでした。どうしてもフィルムカメラの印象があり、『昔の名前で出ています』的な負のイメ

ージがありましたので。

 ところがどっこい・・・技術力でどんどん変革し、他分野にも技術力で乗り出している元気

企業だったのですね。今回のカンブリア宮殿を見た後なら、購入したカメラも違う会社の

モノを選んでいたかも知れません。

 2000年がカメラ用フィルムの売上のピークで、2012年の今は、全く主力商品では無くな

った激変の波を見事に乗り切った会社って、しかも波に揉まれるのではなく、完全に波に

乗った大企業って凄いですよ。今の家電各社は完全に波に揉まれてしまっていますし、

もしかすると脱落する会社が出て来そうな失速感があります。

 まさにフィルムから離れられずに多角化する事もなく沈んで行ったコダック的な状況が

家電各社に感じられるし、下手をすると日本全体にそんな空気がまん延しています。

 富士フィルムは先行して時代の波に晒され、変革を甘んじて受け入れる中で躍進した。

情報をリサーチし、技術力を活かすべく分析、そして果敢に変革を実行した。身軽だった

訳ですね。

 『実行できない日本』『変えられない日本』と言う言葉を最近よく耳にしますが、結局は

怖がっているだけなんですよね。大企業であっても時代の変化には簡単に飲まれると

言うのをコダックは示唆している。コダックになったらダメですね。

 チャレンジャースピリット・・・。

 一度、落ちないと持てないのでしょうか。

 富士フィルムは落ちることなく、さりとて大企業病にかかる事もなく、見事に今もかなり

優秀な成績でサバイバルをしています。

 出来る事ならば、日本と言う国も富士フィルムの様な軌跡を描いてくれればいいので

すが、なかなか古森さんの様な分析力、決断力に富んだ方が日本のリーダーには少な

い様に思います。政治の世界では特にそうかな。既存政党の中では皆無ですね。

 企業経営も同様か。主力商品に拘り過ぎている・・・それは甘えなんでしょうか。

 自動車もガソリンエンジンから電気モーターに変わると、フィルム⇒デジカメみたいな

激変の可能性はありますね。10年でトヨタが自動車を扱えなくなるとすると・・・。

 時代の流れが激しいですから、いつそんな時代がやって来るか分からないんですね。

 何もトヨタだけでなく、各分野でどんな環境の変化があるか分からない。

 環境の変化に恐れていても始まらないので、立ち上がって、変化の波を読み、立ち向

かえる様にならなければダメなんでしょうね。

 満ち足りた状態ではなかなかチャレンジャースピリットは湧き出ないので、危機感を

感じられる環境に自身を追い込まないとダメなのかな。ところが実際にそんな境遇に

なると脚が震え、すくんでしまって一歩前に踏み出すことさえできなくなるかも知れませ

ん。恐れていてはダメ。やれば出来る・・・ 

 なんとも勇気の湧き出でる富士フィルムHDであり、魅力的な古森さんでありました。

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