カンブリア宮殿・・・ゲスト アマゾン CEO ジェフ ベゾスさん
アマゾンのCEO、ジェフ ベゾスさんが今回(2012・6・7)のゲストです。
マスコミにはあまり登場しない方だそうですが、市川にある大きな倉庫で村上龍さん、小池
栄子さんとの撮影に挑まれておりました。
倉庫の一角に椅子を置いてのインタビューでしたので、作業をされている方々の邪魔にな
ったんでしょうねぇ
私が敬愛するさだまさしさんは『関白失脚』と言う唄の中で、そうあの関白宣言をした奥
様に対し、『買い物ぐらい、身体動かせ 』と唄っておりました。この頃はまだ『テレビ
ショッピング』が中心でした。そこから時代が流れ、今では私も、アマゾンでのお買い物が
すっかり当たり前になっています。アマゾンが日本で最初に取り扱ったのは本だそうです
が、その影響で近隣の書店はどんどん閉鎖されています。近隣の本屋が無くなるから
さらにアマゾンでお取り寄せに向かってしまうと言うアマゾンスパイラルがありますね。
本で、アマゾンの便利さを実感すると、本以外の商品もいろいろとアマゾンで買う様にな
っています
そう言えば最近さいたま新都心のスーパーに久しぶりに行ったのですが、スーパーの陳
列の貧弱さに驚きました。店内にはお客さんよりも店員さんの方が多く、商品が床に落ち
たりしているのにそのままの店内にも不審感を持ちました。戦意喪失しておられるのかな。
アマゾンは、物流を押え、流通を大きく変革してしまったと思います。
アマゾンの概要をさらっと触れますと、世界9カ国(思ったより少ない)で事業展開をしてお
り売上は480億8000万ドル(2011年)、約4兆円も売上がある世界企業です。創業は1994
年 まだ20年も経っていない企業なんですって。
4人でガレージで始めた企業だって言ってましたが、アメリカはガレージで始まる企業が
多いですね。日本は・・・住宅事情から変えないとガレージからは企業が産まれませんね。
最初は『本』からスタートしたそうです。宅配だから大きな倉庫があれば圧倒的な在庫を
持つことができ、しかも繁華街に大きな店舗を構えることで高額な家賃を払う必要があり
ませんから、品揃えを武器に本屋のマーケットを取りに行けたんですね。
本から音楽、DVDへと品揃えを増やして行き、お客さまからの要望を聞く中で、今の商
品群に育って行ったそうです。
『顧客主義がアマゾンの基本で、お客さんを中心に物事を考える』企業文化があるから
こそ、今のアマゾンに育って行った・・・。
先のお客さんへの要望をヒアリングする際にも、ただヒアリングするのではなく、そこから
発展させて、アマゾンは何を産み出すのか・・・それが大切だ、とお話しされています。
徹底してそこを考え、アマゾンは『圧倒的な品揃え』を武器に快進撃を続けているんで
すね。
無いモノがアマゾンにはある・・・と言うのは消費者にとって嬉しい事です。
アマゾンのHPに行くと、お米やお野菜から、服や靴まで、ほぼあらゆるモノがお買い物
できます。しかもお値段はリーズナブルで、倉庫は24時間稼働しています。『えっ、もう
来たの・・・』と思う程のスピードで商品がやって来てしまいます。
流通業はアマゾンとの戦いに苦戦を強いられておりますが、物流、殊に宅配便屋さんは
大忙しですね。当方にもまだ9時になっていない時間に荷物が届く事もザラで、朝の個室
での考え事タイムにも情け容赦なくピンポーン と来られて慌てふためく事もあります。
アマゾンドットコムで面白いのは、『レコメンデシーョン機能』と言うヤツ。
私が過去に検索したモノの記憶を持っていて、『こんなんどないだ』と圧倒的な物量攻撃
を個人にも仕掛けて来ます。押し売りと違って、こっちからアマゾンドットコムに行ってま
すからお断りも出来ませんし、お値段はスーパーなのに、私の為だけのコンシェルジュ
機能とも言うべきサービスでしょ。拓郎さんの新譜が出ますよとか、見仏記の新刊が出
ましたよとPRされると、違うモノを探しにアマゾンドットコムに行ったのに、ついついレジ
に進んでしまいます。
考えたらこれもジェフベゾスさんの策略にからめ捕られていたんですね
村上さんが『顧客主義って何をやるべきなの?』と問うたところ・・・
ベゾス氏 『お客さんが何を求めているかを把握し、どうしたら満足させられるかと考える』
とごく当たり前のご回答
ちょっと余談で新社屋にて・・・アマゾンを知るロケがなされておりました。
犬をオフィスに連れて来るスタッフが居たり、エレベーターや通路などいたるところに
ホワイトボードが有って落書きされています。
なんとエレベーター内のホワイトボードに『こんな事で困っている』と質問を書いておくと
それを見た誰かが回答を書いてくれるんですって。これもコミニケーションだって言って
ました
またスタッフの机はドアの廃材の再利用 会議室の大机もドア数枚の力作でした。
社風として倹約をモットーにしており、『家具などはシンプルでいい。お洒落の必要はな
い。かけられるお金のすべては顧客に廻そう』と言う発想なのだとか。
ベゾスさんは『アマゾンはオフィスにお客さんが来ないからこれでいい。弁護士事務所と
は違うのだ』とお話しされておりました。徹底した割り切りです。でも案外アートでした
ベゾスさん、顧客主義の徹底のためのブレインストーミングは大好きで、笑いもあるユー
モアの中で作戦を立案しているとお話ししていました。会議のスタイルの大切さを教えて
くれています。
創業時からの仲間の方がベゾスさんを『普通の経営者は2・3年先の事を見据えて経営を
するが、彼は10年、20年先を見て経営をしている。特殊な能力の持ち主だ』と評していま
した。
ユーモアのブレインストーミングにも通じるのかも知れませんが、アマゾンは IT と物流
分野に莫大な先行投資をして来ました。『もう潰れる』と囁かれながらの経営だった。赤
字決算を続けながら上場を果たし、その後もなお赤字を続けたのだそうです。普通の神
経のCEOならば不安で潰される事でしょう。でも案外、先を読む眼とユーモアのブレイン
ストーミングが出来たからこそ、自信を持って赤字を続けられたのではないかと思います。
ベゾスさんは投資家さん達にも、赤字は『先行投資』だと言い続けたそうです。カンブリ
ア宮殿によくある企業史の中のピンチ話ではなく、『計算された赤字』です。そしてきちん
と黒字化して、先行投資が活きて黒字に転じるとうなぎ昇りの収益を産んでいます。
アメリカ企業は時に2・3年先と言う短期的な視野でモノを見ることが多いと思っておりま
したが、アマゾンはなんだか日本企業みたいです。
(もっとも昨今の大企業は助成金で工場を建てて、ごく短期間で撤退してしまう日本企業
らしからぬ所が多くなりました。経営者の先を読む能力が無くなったのでしょうかね。)
アマゾンが黒字化したのは2003年だそうです。設立自体が最近の話しですから、猛烈な
ダッシュで駆け登ってきた感はありますが、1994年から2002年までと言うのはCEOとして
も辛かったでしょうね。
番組では、『アマゾンのPRタイム 』として、ラスト10分をキンドルの紹介に当てており
ました。ベゾスさんの戦略ですね。ipad の半値以下の価格で・・・キンドルは買えるんだ
よ・・・。アップルのヘビーユーザーでさえ、コストパフォーマンスでキンドルを買い、充分
に満足している・・・とインタビューされておりました。
そして、そのキンドルの日本語版が・・・
ベゾス氏曰く、『年内には良い知らせをお伝えできるでしょう・・・』
なんとも巧みな焦らし戦法であり、アマゾンの無色透明、無味無臭感を上手に表現して
いると思います。
ラストで、村上龍さんが起業時の決断のお話しを尋ねました。
『金融会社の副社長と言う立場を捨ててまで起業するのは勇気がいったでしょう?』
『上司から2日間、ゆっくり考えろ』と言われたそうです。
そして起業したんですね。
『もし挑戦して失敗しても後悔はしない。でも挑戦しなければ後悔する・・・』
仕事や日常生活においての後悔は、『やらない事、やらなかった事に対する後悔だ』と
お話しされておりました。悩む前に行動しよう、どうしたら満足を得られるのか?を考え
よう・・・。
さて恒例の村上龍さんのショートエッセイです。
アマゾンの軌跡を辿ると、アメリカにはいまだ確固たるフロンティアが残っていると
思わざるを得ない。インターネットの電子空間とリアルな物流を組み合わせる事で
ベゾス氏はたった4人によるガレージでの創業から、20年足らずでまさに複雑に生
命が入り組んだ熱帯雨林の様な巨大な『経済圏』を作り上げた。
『何故そんなことをやるのか』よりも『何故やらないのか』と言う問いの方に正当性
があるとベゾス氏は考えている。
徹底して顧客の側に立ち生産者と消費者を限りなく近づけると言うアマゾンの基本
戦略から学ぶべき事は多い。
カンブリア宮殿の後のテレ東の時間は『ワールドビジネスサテライト』です。
青森の駅前振興の経産省の助成金が廃止になると言うニュースをやっていました。
地方都市の駅前は惨憺たる状況の場所がたくさんあります。
さいたま新都心のキーテナントでさえ、消費者の心を掻き立てるモノはなく、『衰退』を
感じる店内(紳士服売り場など)にあ然としました。
私が学生の頃はメーカーから流通に覇権が移ったと言われ、流通 vs 物流の戦いが
あるのではと言われておりましたが、それをアマゾンが征し、日本の物流業は傘下に
組み込まれる形で決着したようです。
今の流通業には消費者の購買心を喚起させるパワーが無くなってしまった様に感じます。
部屋に居ながらにしてコンシェルジュ機能を果たす機能に対し、リアルな店舗はお客さま
の為に何をなすべきか・・・と言う、ベゾスさんが日々考えているテーマに対する『業』とし
ての答えがまだ出ていませんね。
日本は物流がしっかりしていますから、街のデパートにお買い物に行く手間暇とお金を
かけなくても良くなったんですね。都市圏だってスーパーはこれから押され続けると思
います。地方都市はこのまま行くと崩壊するでしょう。
先のニュースでは、助成金をあてにした駅前ショッピングビルのリニューアルなんて話し
を地元の方が話していましたが、『廃止もやむを得ない』と思わざるを得ないと思いまし
た。コミュニティーを守ること、また中心街を守る事は大切だと思います。が、ただ助成
金を使って施設を作っても街は潤わないし、活気も出ない。半端なカネをかけて期待を
煽った分、意に反して錆びれゆく駅前を見ると、より衰退が早まる事になると思います。
それぞれが、それぞれの立場で『お客さま』の事をもっと考えなきゃダメなんです。
『どうすれば・・・』と言う事です。地域の情報をきちんと集約させて、ベゾスさんに負けない
ほどに考える事です。議員も商工業に携わる者も住民もみんな結束して考える事です。
カネだけバラまけばイイと言うのではないと思います。
ドアを再利用する位の覚悟で持ってお金のありがたみを実感し、最大限の効果をお客さ
んに感じていただける様にまずは発想の転換が必要ですね。
アマゾンと言う4兆円の売上を支える巨大企業の根幹は極めてシンプルでした。
『顧客主義』と言う幹に、倹約と言う演出があり、さらにスタッフを『顧客主義』に向かわせ
る。
これはすぐにでもマネが出来そうです。
ただベゾスさんがコツコツ築き上げた『投資』の結果たる盤石な物流網と IT 網。
これはなかなか追随を許さないでしょう。
消費者のお買い物のスタイルが変化してしまっている昨今、本屋さんなどと言う小分類
のお話しでは無く、小売業、流通業と言った大分類が駆逐されてしまう程の激しいバトル
が実は繰り広げられています。
お時間があればぜひご近所のスーパーに行って、食料品売り場以外のコーナーを廻って
みて下さい。
既に優勝劣敗を感じるのではないでしょうか。
その良し悪しは分かりません。
ただこれが現実なのだと思います。
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