カンブリア宮殿・・・JAL 取締役名誉会長・稲森和夫さん
今回 (2012・6・27) の放送はカンブリア宮殿の300回記念。30分延長のスペシャル版で
経営の神様、稲森和夫さんがゲスト出演されました。
JALについてはもうどうこう言う必要はないですね。
政治家のゴリ押しで不採算路線ばかりが増え、『延び切った翼』と称されたJALは2010年
1月19日に破綻しました。もっとも政治屋だけが悪いのではなく、半官半民だった奢りが
あったから会社がダメになった訳で、政治屋だけの責任ではもちろんありません。
私自身、10年以上前からANA一辺倒です。
企業再生支援機構送りにされたJALは、金融機関からの5000億以上の債権放棄を受
け、飛行機の数を減らし、従業員も48,000人⇒32,000人に減らし、また不採算路線も
廃止して建て直しに注力したそうです。
稲森和夫さんのアメーバー経営 (社内を細かくグループ分けして、それぞれが採算を
取れるように努力する) を実現すべく、いろいろとご苦労されたお話しを判り易くお話し
されておりました。
とある会議の席で、稲森さんが・・・
『あなたの話しは官僚的だ。潰れた自覚があるのか』と叱責したところ・・・
『官僚的とはどう言う意味か?』と喰ってかかられた事があったそうです。
傲慢さが潰れたJALの職員には多分にありました、と率直に稲森さんはおっしゃって
おられました。
喰ってかかる態度は『素直じゃない・・・』、過信・慢心があってはダメだ・・・稲森さんは
言います。
JALの経営を頼まれた際には『任にあらず』と断り続けたのですが、最終的には義侠心
で引受けたとの事。家族や友人は晩節を汚すから辞めろと再三、忠告を受けたそうで
す。
稲森さんは『JALは横柄で客を大事にしないから嫌いだった』・・・。
経営者に就いて、1ヶ月間徹底的に議論し、JALの舵取りを始めた・・・
JAL改革の①は、JALを670のグループに分けて、各部門で採算をとるようにした事。
これはアメーバ経営をJALでもやったと言う事ですね。
路線管理も、改革前は路線ごとの管理だったのが、便ごとの管理に変わったそうです。
具体的には、予約の状況次第で、一日前であれば、機種を変更してしまう。予約が悪
ければ中型機から小型機に変更し、燃料・スタッフの人件費を節約している。
以前は1カ月経ってようやく収支が判っていたものが、今では日ごとに終始が判るまで
の意識改革が出来たのだとか。
改革②は、JALフィロソフィの制定です。
これまた稲森さんらしい。『かくあるべき』のお話しをまとめた本です。
『美しい心を持つ』だとか、『土俵の中央で相撲をとる』・・・なんて言葉を集めています。
素直で美しい心を持たなければ、いろんな事に取り組めない・・・と言う稲森さん独自の
お話しですね。稲森さんが書いた本は我が家も数冊ありますが、自己実現をする、夢を
かなえる為には・・・と言う倫理のお話しが多いです。何も経営ばかりではなく、『仕事』
全般、自分を高めていくものだ・・・と言う精神です。
常に謙虚な心で、改革に励みなさいと、各スタッフのメンタルな部分にもくさび打って
行ったんですね。
整備部門では、各部品に原価を明示し、例えばビニール袋大は6円、小なら4円・・・
どちらを使うのか、と言った細やかな意識改革を実行した。これで年6000億円も改善
できたそうです。(どれだけ今まで無駄にしてたんやと言う裏返しの話しですけどね。)
2012年3月期は2049億円と過去最高の利益を上げた。予想値の2.6倍ですって。
給与は30%カット、企業年金も現役で50%、OBで30%をカット等々、痛みを伴う改革
をしました。
稲森さんは、『人間の心の有り様が大事だ』と言い、『哲学』を励行すれば大丈夫。
アメーバー経営は、製造業だけでなく、JALの様なサービス・運輸業だって、あらゆる
業態に当てはまる黄金則だと笑います。
フィロソフィで稲森さんが一番好きな言葉は『美しい心』だと語ってました。
これは抽象的すぎてなかなか掴みにくい言葉だと私は思うのですが、経営者は従業員
の心を掴まなければダメだ・・・と話していました。(難しい事ですけどね)
稲森さんは番組の中で、JALは出鱈目な経営をしていた・・・と、率直に話していたので
これにはビックリしました
この後番組では、JALのボーイング787の紹介などかありましたが、ここは宣伝コーナー
だと感じたので本ブログではバッサリ切りましょう
新サービスとして、機内食にモスバーガーや吉野家、ミスタードーナツと組んで提供し
ているものが有ると言うのもやってましたが、これは良い事なのかな?とちょっと疑問。
安直な答えの出し方なんじゃないかな。サービスだって言ってましたが・・・
敢えて『新生JAL』と誇れる程度のものかなぁ~。
現社長・植木さんも途中から登場。稲森さんが元パイロットの植木さんを社長に就かせ
たのは、『一番誠実な人物』だと感じたから。
植木さんも、社長就任を受けるに際して、『無私になれるかどうか』を自問されたそうで
す。
稲森さんは、今の経営者は破綻前のJALの経営者に似ていて、『自己犠牲を払ってでも
社員やお客さんを大事にしよう』と言う気持ちに欠けている。自己犠牲を厭わない心が
なくてどうするのか。逆境を跳ね返そうと言う経営者の気力が萎えており、若い世代に
まで、そんな心が蔓延している様に感じられると苦言を呈されておられました。
初フライトの787の機内で、客室乗務員さんが手書きのレターが機内食に添えられて
おりまして、『新生JALをこれからもよろしく・・・』と言う言葉が達筆な文字で綴られてい
たのが印象的だったな。
さて恒例のショートエッセイです。(カンブリア宮殿のHPには『編集後記』と名称が変更
になっていました)
300回と言う節目の収録で稲森さんとお話しできたのは、幸運だった。
収録前、『本当は前原前国交相に質すべきでしょうが、国策としての救済には違和
感がありました』と言うと、稲森さんは『いや、私に、何でも聞いてください』と言われ
た。どんな質問をしても、誠実に、ていねいに、答えていただいた。
オーラがすごかった。『神様』と話しているような気がしてきた。日本で、最後に残った
経営の神様だ。ただし、JALが本当に再生できたのかどうか、現時点では私にはわか
らない。業績改善のおもな要因はコストカットであり、成長に転ずるには乗客や路線
を増やさなければならない。巨大企業の体質がたった2年で変わるのかと言う疑問も
残る。サバイバルは本物なのか、答えが出るのは5年後だろう。
村上龍さんのショートエッセイに有る様に、本来の再生とは、サービスを顧客が認めて
お客さんが評価し、売上・利益が積み上がって行くことにあるのでしょうが、企業の
存亡と言う事に限定して考えると、本来努力すれば簡単に廻っていたモノが奢り・慢心
により、無駄の限りを尽くして、歴史ある企業を経営陣・スタッフが潰してしまった、と言
う事になります。経済のルールから言うと、特定の企業にのみ、やり直しが許されるの
はフェアーではないと思います。
国費を投じてJALを再生させる様に、仕向けてしまったのですから、村上さんが言う様に
お手並み拝見と行くしかありません。『決して高い買い物』にしない様に、フィロソフィが
浸透し、客を大切にする心で謙虚にサービス向上や、より安価で安全、快適な移動が
保証される様にご尽力いただきたいと思います。
村上さんは、番組のラストで、『東電』の経営者に就いて欲しいと懇願されたら・・・と
稲森さんにご質問されてました。稲森さんは笑いながら、固辞してました・・・。
慢心や奢り、独占の下で客を大切に思わず、原発被害者にも真摯に向き合おうとしな
い電力各社こそ、フィロソフィが必要ではないかと思います。
日航よりも大変だし、腐り具合もひどい電力に、80歳を超える稲森さんが・・・と思うと
固辞もやむなしと思うのですが、誰かにやって貰わないと、電力は自分では変われな
いのでしょう・・・。
潰れたJALと体質は似ており、ばか高い燃料を調達しても、差額調整の名目で料金に
転嫁出来るので、コスト意識は全くない。『無私』や、自己犠牲なんて発想は欠けらも
感じられません。もっとも民主党のフィクサーとして稲森さんが関与されていても、あの
民主党の体たらくでは、官僚・政治屋・電力の妖怪退治は稲森さんおひとりでは出来な
いのかな。
| 固定リンク
「カンブリア宮殿」カテゴリの記事
- カンブリア宮殿・・・ハローデイ 社長 加治敬通さん(2013.12.19)
- カンブリア宮殿・・・株式会社シャルマン 代表取締役会長 堀川 馨さん(2013.11.07)
- カンブリア宮殿・・・ナカシマメディカル 代表取締役社長 中島 義雄さん(2013.11.01)
- カンブリア宮殿・・・トレジャー・ファクトリー 社長 野坂英吾さん、BSIZE 代表 八木啓太さん(2013.10.25)
- カンブリア宮殿・・・コッコファーム 会長(創業者) 松岡義博さん(2013.10.18)
コメント