メイドインジャパン 逆襲のシナリオ 2 復活への新戦略
忘れかけていたものづくりの原点
サンヨーがハイアールに買収されましたが、なんと経営陣がハイアールになってタイの
工場が工場長以下スタッフはそのままなのに黒字化したと言うのです。日本人の工場長
曰く、『サンヨー時代には工場長は、工場の生産性だけに気を配っていたのだが、ハイ
アールになった今、工場長にも販売の目標が設定された。したがってコストダウンや
営業の声、消費者の声を聞かなければならなくなった。』と言うのです。
冷蔵庫の売れ筋は日本だと白なのでしょうが、中国では赤などに人気があり、またアフリ
カだと鍵付きの冷蔵庫に需要がある。各国のお国柄や消費者の要望を汲んだ商品を
作った事で慢性的な赤字が解消されたのだとか。
ハイアールの張CEOは松下幸之助さんや稲盛和夫さんの本を読んで勉強し、消費者第
一主義の徹底を強く命じているのです。そして消費者の声を聞きながら自発的に考えよ
うと提案している。故に考えるヒントをもらいに工場長自ら量販店に行き、消費者の声を
聞くようになりましたと笑顔で答えていました。
日本の消費者は世界一厳しいと言われます。だけどそれ故に、日本の家電は胡坐を
かいてアジアの消費者を上から目線で見ていたのではないか・・・?
ハイアールの張CEOは松下幸之助の水道哲学の信奉者だと言ってました。
グローバル化する中でいつのまにか内向き志向が強くなり、世界中のお客さんの要望
を聞くことを忘れてしまった・・・と言うのが、どうやら日本の家電が低迷するに至った
大きな理由のようです。
ちょっと悲しい事実です。
ライバルとパートナー
次にダイキンが紹介されました。中国トップの格力電器と、インバーターを無償貸与す
る事を条件に提携したのだそうです。ダイキン社内では技術流失を恐れる声もあった
のですが社長が技術を提供する代わりにネットワークを利用しようと英断した。
それによりダイキンの製品も60%の売上増が出来たそうです。
技術のオープン化で仲間を作った方が賢明で、技術をブラックボックス化するのはこ
の時代NGだと。ダイキンの技術は経験と勘に基づくものが複雑に交錯しているので
当初危惧された技術流失は実際はないとの事でした。
ただ企業は常に挑戦に次ぐ挑戦を繰り返し、技術のレベルアップをするのが大事。
たとえ半歩でも前に進もうと開発の努力をし、その開発が消費者に利便性を与える。
技術が盗られても、更に先に行く努力をすべきだ・・・と言うのはごく当たり前のことで
すね。日本は「規格」競争でよく敗北するのなまじ技術力があると過信するから起こる
事なのでしょうかね。
技術はやがて追いつかれるモノです。追いついた頃には次に行く・・・。これぞ技術大国
の度量です。
グローバル化には大きな戦略と緻密な戦術が必要で、トヨタのハイブリッド技術の欧州
への提供などはこの例だと話していました。進出相手国のナンバー1企業と提携する事
で市場を押さえるのも大事な戦略です。また円高を逆手にとってコクヨがインドのカムリ
ン社を買収したり、キリンビールが中国の華潤グループを買収したのも同様の考えによ
るのだそうです。
技術大国と言われる日本もデジタル時代の中で、当然に技術の陳腐化と戦わねばなり
ません。国内では既に技術の陳腐化と50年前から戦っている業界がある。繊維業界で
す。
超継続が革新を産む。
ここで紹介されたのは東レです。炭素繊維は50年前から、海水から真水を作る膜の研
究は44年前からやっていた。当時何に使うかなんて事は考えずに、研究をし続けてき
たそうです。深 (しん) は新 (しん) なり。より深く研究して行く事で新しいものになる。
研究開発費は右肩上がりで一定額を常に確保し、短期的な利益だけを考えずに研究
を続けているそうです。諦めないで研究を続ける事。経営者は技術に関する理解が必
要で100に1・2が当たれば良い・・・と言う度量の大きさが大事です。昨日の①で紹介さ
れたソニーやシャープはこの我慢が足りなかった・・・。
東レは勤務時間の20%は好きな研究に使っていいそうです。アンダーグランドの研究
が自由裁量で認められ、それが自由闊達な社風を産む・・・。
あれ?この20%ルールって、アマゾンも同じ事を言っていた気がします。社歴は圧倒的
に東レが長いのでアマゾンが真似をしたのかも知れませんね。
自由闊達な社風が出来る最低条件は加点主義の人事だそうです。減点主義や「管理」
が前面に出ると自由闊達には成りえない。ハイアールの張CEOが話していた「自発的
に考える」ことをしなくなってしまうのでしょう。
革新をし続ける事と言うのは、常に自由闊達な企業風土で有り続ける事。
3丁目の夕日が流行ったのも、日本人が種としてあの頃の心を取り戻そうとしたのかも
知れませんね。
アップルのジョブズさんはオバマさんに経済を良くする方法として3万人の熟練エンジニ
アが必要だと言っていたそうです。博士号などは必要なくて、熟練した職人が必要。
来日した際には、日本本社に行かずにアップルの部品を作っているアルプス電気に行
って工場見学をしていたと紹介されていました。
技術=知を結集させるプロデューサーが逆襲のカギになる。
ジョブズさんやサムスンなど、まさに彼らがやっているのは知を結集させて新しいモノ
を作りだす行為であり、それはプロデューサー的な役割だ。
日本にもそういうプロデューサーがベンチャーとして出て来ているそうです。
岩佐琢磨さんやひとり家電として先日ガイアの夜明けで紹介された八木さん (Bサイズ
さん) が紹介されておりました。
大手家電メーカーの若者は自分のやりたい研究が出来ないことに不満を持っていて
岩佐さんの元に集まったり、たったひとりでBサイズさんみたいに起業して、商品を作り
だしている・・・。もともとは自由闊達に研究していた日本の家電大手に「管理」と言う魔
物が跋扈するようになった結果、そこからこぼれた優秀な研究者が自力でベンチャー
として育とうとしている・・・。ベンチャーはヒト・モノ・カネ・信用が薄い中で研究開発しな
きゃならない訳ですが、なんの事はない、日本の大企業が社外ベンチャーとしてそれ
を育てればいいのではないか?と番組内で提案されておりました。
新世代と旧世代がネットワークを持って新しい組み合わせを作ろう。それが日本の閉塞
感を打破するきっかけになりますよ・・・と言うのが2日間のまとめでした。
日本が失われた20年を経験するに至ったきっかけは金融ビッグバンの頃。
ファイナンスで金儲けをする習慣が欧米からやって来て、株なども盛んになった。
その頃から長期的視野の経営がだんだん廃れて、短期的な経営がもてはやされる様
になった気がする。経費削減や経営管理と言う言葉とコンプライアンスなんて概念も
同時期にやって来た。
日本的経営があれだけもてはやされ、ジャパンアズナンバーワンなんて言われていた
のに、いつのまにか欧米的な経営が蔓延し、結果、日本企業の自由闊達な精神が消
滅した。欧米流の経営に感染し、元気・活力を失ってしまう・・・。
社員が自ら考え創意工夫をしていた企業が、大きくなるに従って風通しが悪くなり、
同時に管理の名のもとに従業員を縛った結果、自ら主体的に考え創意工夫をする
事がなくなってしまった事が日本衰退の源だった。
サンヨーのケースから考えると、日本企業はまだ全然戦える状況にあって、一時的に
方向性を見失っているだけに見えます。
会計基準や法人税の考え方など、ちょっと工夫をすれば、DNAが生き続けているので
案外簡単に復活の芽が出てきそうに思えます。
納税の観点からは毎年決算が必要なのでしょうが、企業会計なんて3年、5年単位で
モノを考えるようにしたらいいのにね。四半期決算だとかなんだとかで株式投資家が
一喜一憂し、時価総額なんて言葉に踊るから経営が間違ってしまう。
ソフトバンクの先日の買収劇なんかは孫さんが短期的な視野で経営していないから
こその技であり、株価は一時的に下がったですが翌日は持ち直していましたね。
サラリーマン社長は自社の財務の報道にビビるのでついつい間違ってしまうのでは
ないでしょうかねぇ。
大企業なんて言っても報道がごく短期的な事で大騒ぎしてしまうから、本来のあるべき
姿を見失い、経営者がやるべきことを忘れてしまう・・・。
マネーゲームなんて言葉に踊った自分たちを恥じ、日本国中が反省して、もっと未来
の為に仕事をするようになればいい。
塚越寛さんの著書で知った二宮尊徳翁の言葉・・・
遠きをはかるものは富み
近くをはかる者は貧す
それ遠きはかる者は百年のために杉苗を植う
まして春まきて秋実る物においてをや
故に富有なり
近くをはかる者は
春植えて秋実る物をも尚遠しとして植えず
唯眼前の利に迷うてまかずして取り
植えずして刈り取る事のみ眼につく
故に貧窮す
この言葉を社会が実現できるような仕組みの変更、価値観、考え方を変更すればいい。
2日に渡った放送の内容が、これだけの文字数の中に収まっていると思います。
毎日、この文を読むだけだって良いかもしれません。
二宮尊徳翁の銅像をまた小学校に建てることから始める事が大切なのかなぁ~。
日本人、ひとりひとりの問題なのでしょうねぇ。
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