カンブリア宮殿・・・和郷園 代表理事 木内博一さん
今回のサブタイトル 【年商4000万円の農家続出 ニッポン農業の未来はココに!】。
なんとも刺激的ではありませんか。
千葉県周辺の90軒以上の農家さんが集まって、農事組合法人『和郷園』を作っています。
カフェをやったり、農園リゾートコテージや、温泉施設まで経営している姿が放映され、
企画から運営まですべてを和郷園さんがやっていると聞いて驚きました。
冒頭ですっかり心を掴まれてしまいました
参加している農家さんの平均年商は4000万円。1億越えの農家さんも居るそうです。
ちなみに日本の農家さんの平均所得は470万円。
どこが違うんでしょう?
20年前に5軒の若手農家が立ち上がった。一家総出で働いてもいくらにもならない農業か
らの脱皮を図ろう
木内さんは大学で経営学を学ばれたそうで、視点がとてもユニークなご仁です。
とある日のスーパーにて。
木内さんはスーパーに直接農産物を出荷していたそうです。
いつもの様にスーパーに出荷していた時に、おばちゃんが店員さんに相談しているのが
目にとまった。
『このゴボウ、二つに折れないものかなぁ~。買い物かごにも入り難いし、持って帰るのに
も長いのは邪魔になる』と言うのです。
『ゴボウを2つに折って、袋に入れて出荷してみよう』
ちょっとの加工ですけれど、消費者の要望をストレートに汲んだ商品の誕生です
なんと・・・ゴボウをそのまま出荷する価格の3倍の値段で売れたんですって。
農地には限りがある中で、生産額を上げるには・・・と言うヒントがそこにあったんですね。
消費者の求めに応えれば売れる。しかも良い価格で買ってくれる。
食材としてのおいしさを各農家が追求する一方で、カット野菜や冷凍野菜などの加工に
まで和郷園は取り組んだ。
これまでの20年は失敗の連続だったけど、川上から川下まで、すべての分野をフォロー
する他に類を見ない農産物生産・加工集団に進化したと力強くお話しされておりました。
ちなみに・・・青果18億円、冷凍・加工17億円、レストラン10億円、その他15億円の合計
60億円の売り上げがあるそうです。このバランスも絶妙ですね。
川上の青果は日本全体だと6兆円の売上です。川下の調理・加工したものの売上は日本
中で73兆円にもなる。川上を粗末にしてはダメだけど、73兆円の市場にもしっかり絡みた
いよね~と言う戦略です。
農業の6次産業化なんて言葉をよく耳にしますけれど、こういうアプローチもあるんです
ねぇ。
土足禁止のハウスでフルーツトマトを作る農家さんから、きゅうりやホウレンソウを作る
農家さんまで、それぞれの味のこだわりはお見事でした。
和郷園では独自にカット工場から、冷凍工場までを自社保有しています。
なるほど育ち過ぎたサツマイモはそのまま出荷すると規格外で値が下がりますが、カット
してしまえば問題はない。
それぞれの生産農家さんのこだわりがきっと加工にも活かされておいしいのでしょうね。
冷凍野菜も和郷園の農家さんの写真が包装袋にあると美味しそうに感じます。
和郷園のバイヤーさんがスーパーに年間出荷量をグリップしてあって、にんじん農家さ
んは既に売れているにんじんの種を畑に撒いているとも紹介されておりました。
出荷量だけでなく、価格もグリップされているので安心して生産できるんですね。
これは農家さんの経営の安定化に絶大な効果が期待できます。1軒だけの農家ではなか
なかこうはいきません。集団ならではの恩恵です。
作ることだけに集中するのではなく、流通環境や小売りの環境をしっかり観察して、
例えば売り場だったり、消費者心理までよく吟味をして生産をしなければ、生産物を高く
買ってもらえません。日本の農家は生産性は世界トップクラスです。ただ農地が狭いの
でどうしても効率性が悪くなる。黙々と生産していても豊かな農家にはなかなかなれない
と言う事でした。
和郷園は野村証券とコラボしたり、食物工場を作ったりと、いろんな工夫をされています。
それも川下の商圏を持っているからこそ拡大して行ける戦略なのかなぁと感心しながら
見させていただきました。
ラストで、村上龍さんが矢継ぎ早に質問を木内さんにぶっつけました。
その木内さんの回答の一部を抜き書きしてみました。
・農業はブームだ。これから世界で日本食のブームが来るのではないか。そうすると日本
の農業は更なるブームになると思う。
・農業補助金は一部の農家に確実に害がある。
・農協は農家に貢献した時代もあったが、護送船団式支援ではこの時代は通用しなくな
って来ているのではないか。
・カロリーベースの農業生産は虚構。40%の自給率と言う事は、60%は海外産の農産物
がスーパーに並ばなければいけないのだけど、輸入農産物なんてあまり見かけないもん
ね・・・。何十年もの農水行政がおかしいと言ってるのでしょうね。
実際は70~80%は自給してますよと言う事でした。
これからは『農業労働者』ではなく、『農業経営者』が求められる時代になると言う事でし
たが、なるほどなぁと思いました。この進化を果たした農家さんはきっと世界を相手に
飛躍されるのでしょう
なんとも元気になる農家論でした。
村上龍さんの編集後記です。
おそらくほとんどの人が、農業は重要だと認めるだろう。
今でも日本人の主食は米であり、安全とおいしさを求めて国産の野菜に対する需要は高
まっている。だが、わたしたちは、農業という産業、職種に対し本当に敬意を払っているだ
ろうか。農業は辛いものだ、泥や汗にまみれ、しかも休日がない、かっこ悪い仕事だと、ど
こかにそういった意識があるのではないか。
日本の農業に必要なのは、補助金でも、自由化反対論でもなく、成功モデルだと木内さん
は言う。和郷園のような集団が、日本中に増えて欲しいと思う。だが、同時に、消費者の側
にも努力すべきことがある。わたしたちは、農業・農家への関心と理解、それにリスペクトを
持つべきである。
千葉は首都圏に近いと言う地の利と、温暖な気候が農業に向いているのでしょうね。
我が埼玉でもこういう組織は既にあるのかなぁ~。
また被災地の福島なんかは全国有数の農業県だと思うんだけどどうなんでしょう。
護送船団の過保護な農業でなく、やる気のある農家さん達だけが集まった農事組合
法人と言うのがミソですね。日本には元気な農家さんもたくさんいらっしゃいますが、
集団で成功している・・・と言うのはなかなか少なそうな気がします。
被災は全域だから、みんなで手に手を取って・・・と言うのではなかなかこうはいかない
んだろうな。全農家さんが神経を研ぎ澄まして生産に集中するだけでなく、消費者に
耳を傾けると言うのも容易ではない。
でも『風評』が、却って災い転じて・・・になる可能性もあるのではとも思います。
福島県の農家さん達の中からもこうした集団が出てくればいいなぁ~。
そもそも農協ではこうした育成は出来ない訳で、農政が過去の過ちを認めて、もっと
競争にも打ち勝つ農業を育めば、雇用だって、景気だってプラスになるんじゃないのか
な。アベノミクスでも農業って言うんだけど、話しを聞くと補助金の話ばかりで、元気な
農業の逆ばかり言ってる気がします。
自信に充ち溢れた農家さんのお子さんは、必ず家業を継ぎますよね。
気合の話しだけじゃなくて、経営としてもしっかりしたモノであればまず間違いないでしょ
う。
農業問題となるし悲観的な話ばかり先行しますけど、こんな元気な農家のお話しも日本
にはあるんですよ
金融の野村が農業に眼をつけた・・・と言うのも、慈善ではなく儲けのチャンスがあると
踏んでいるのでしょう。
刺激を受けた農家さん達がたくさん居てほしいなぁ~
震災が強い福島の農業を作ったと将来言われるようにぜひなって欲しい。
古の農業は洪水で運ばれた肥沃な土で支えられていたと聞きます。
津波は悲しい出来事もいっぱいもたらしたけれど、未来の種もいっぱい運んでくれたと
将来の教科書に書かれていたら嬉しいな。
禍福はあざなえる縄のごとし・・・。たくさんの涙はたくさんの将来の笑顔を呼び込むの
ではと思いたいな。
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