立川志の輔さんの落語・・・
志の輔さんの落語がいい
数万円の CDBOX が売れていて、しかも好評なんだそうで、同行の志がたくさんいます。
新作落語は言うに及ばず、古典落語に関しても、志の輔さんの仕立て直しで、登場人物
やストーリーなど、結構変えてしまっています。
落語は観客ひとりひとりが演者さんの話す噺を頭に思い描いて成立する芸です。
それ故に『いかに自然に噺が進展するのか』が大事です。
観客の頭の中の俳優さんや女優さんに演技指導をするのが噺家の役割。
カメラの前で名優さんに思った通りの演技をしてもらうのだって大変なのに、噺家さんたち
は見事に演技をさせますからね。
さて、そこで・・・です。
昔から語り継がれたストーリーを仕立て直す志の輔さんの脚本家としての才能がおそらく
他の噺家さんの追随を許さないレベルにあります。
志の輔さんは愛情豊かで、とても優しい人なんだろうと思うのです。
こうあって欲しい・・・と言うところを、志の輔さん流に仕立て直してあるから私の耳に入っ
て来やすくて、必然的に頭の中の俳優さんや女優さんが活き活きとお芝居をしてくれる。
脚本に無理がないからきっとそれぞれの観客の頭の中で名演技が繰り広げられている
んですよ。
満員のホールの中で志の輔さんが演じているのだけどいつの間にか志の輔さんが消え
て、大工さんや魚屋さんがおかみさんとお芝居を始めています。
大勢で聴いてたはずの落語なのですが、私の頭で私の為だけに志の輔さんが演じて
くれているのです・・・。
いつの間にか江戸の町に連れて行かれることもあれば、クリスマスの東京に居ることも
ある・・・。
腕のイイ催眠術師に催眠術をかけられているのかなぁ~。
志の輔さんは決して美声ではないですし、容姿も普通です。
でも全編を通じて優しさがあって、呪文も古風なままだったり、登場人物の数だったり、
判り難い所、腑に落ちないと思われる所はすべてに渡って仕立て直しをされているの
です。
だから呪文が効くんですよ・・・ネ。
もともと江戸と言われた頃から物凄い数のお客さんが聴いて納得してきた呪文みたい
な噺です。効果効能はばっちりなんですよ。
ただ所々、古びたりほつれてると思われる部分もある。
それを感じさせないで話すのが名人上手と言われる噺家さんなのかも知れません。
でも『あなたのために仕立て直してあります』と言うのも心地よい。
もしかしたら名人さんより心地が良いのではないでしょうか。
細部にまで気が配ってあって、本当に居住い・佇まいにぴったり合うのですから。
映画や本も同様なんですけど、眼が主体の情報より耳主体の情報の方がより脳には
刺激が強いのだと思います。よりどんくさい機能の方が脳に来るんでしょうね。
落語が鼻に来たら、もっと感動するのではないでしょうか・・・。ちょっと脱線しました。
私は志の輔さんの落語がなぜこうまで心地がイイのかと言う回答として、①噺の仕立
て直しの技術、②優しさ、③話術の巧みさなんだろうと思っています。
それが相まって、志の輔さんの落語を聴くと心がほっこりするんですね。
しっかり笑わせて貰って、泣かせる噺がいいんですよ。
志の輔さんの落語では、40分~50分ほどもある長い落語ほどいい心持ちにさせられて
しまう。
独演会などでしか聴けない長さですよね。大勢の噺家さんが出る落語会なんかでは
とても出来ません。
そう考えると、志の輔さんの落語を創ったのは談志さんだと言えるのかな。
そして始末に悪いのが、この長い人情物の落語に接すると常習性があるんです。
私もその口で、私は『歓喜の歌』、そして『徂徠豆腐 』で撃沈してしまいました。
映画館は暗いので泣いてもごまかせるのですが、落語の独演会は明るいから・・・。
幸いなのは私だけではなくて、そこここからすすり泣きの声が聞こえてくるから、まぁ
いいやと
最近はチケットの抽選も当たりませんので禁断症状が出る始末です。
私みたいな方々が冒頭のCDBOXを買ってしまうのでしょう。
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